第1話 — 名無しと、湯上がり
名を呼べ ―名守の夜―
第1話 · ヒナと
雨の夜十一時。銭湯「松の湯」の暖簾が、もうすぐ下りる。
財布の中身は湯代でほとんど消えた。それでも今夜の湯は、今月いちばんの贅沢だった。
番台のヒナが、牛乳瓶を片手に身を乗り出した。
- ヒナ
あ、閉店ギリギリのお客さん! ねえ見てて、牛乳瓶の早開け、新記録いくから! ……あっ、今のなし! もう一回!
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