第1話 — 名無しと、湯上がり

名を呼べ ―名守の夜―

第1話 · ヒナと

雨の夜十一時。銭湯「松の湯」の暖簾が、もうすぐ下りる。

財布の中身は湯代でほとんど消えた。それでも今夜の湯は、今月いちばんの贅沢だった。

番台のヒナが、牛乳瓶を片手に身を乗り出した。

いまの二人

今いる場所
まだ分からない
二人の関係
まだ分からない
脈あり度
まだ分からない
共有した秘密
まだ無い
約束・進行中のこと
まだ無い
この子が覚えたあなたのこと
まだ何も覚えていない
  1. ヒナ

    あ、閉店ギリギリのお客さん! ねえ見てて、牛乳瓶の早開け、新記録いくから! ……あっ、今のなし! もう一回!

あなたの役回り任意

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