「お前の薬は地味だ。宮廷にはもっと華やかな魔法薬が要る」
そう言われて王都を出てから、七日が過ぎた。荷馬車を三つ乗り継ぎ、最後は歩いて峠を越えた。薬師リクの鞄には、乾かした薬草と、使い慣れた乳鉢がひとつ。それだけだった。
峠の向こうに、小さな村が見えた。風車がひとつ、ゆっくり回っている。畑と、石垣と、煙突から上る細い煙。地図の端に、名前だけ書かれていた辺境の村だ。
「ここで、薬屋を開こう」
空き家を借りて、棚を拭き、薬瓶を並べた。看板は無い。代わりに戸口へ、乾かしたカモミールの束を吊るした。
一日目、客は来なかった。二日目も来なかった。三日目の昼、床を掃きながら、リクは小さく笑った。宮廷でも、最初はこんなものだった。
そのとき、戸が勢いよく開いた。赤いバンダナの少女が、息を切らして立っている。
「薬師さん!村のみんなが、腰痛で……!」
外に出たリクは、言葉を失った。腰を押さえた村人が、畑の向こうまで列を作っていた。
――この話の名場面を、BunChoの漫画エディタで4コマにしました。「漫画」から読めます。