『MY IDOL HATES ME』第6話「触れるな』
——MY IDOL HATES ME』第6話「触れるな
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蓮の素手が海の黒レース手袋に近づく。触れる1センチ前に海が自分の手を引く。暴力的につかまない。/短く鋭く息を吸う音。
海は青い前髪の隙間から天井を見て、声を落とす。黒いレース手袋を自分の胸元に寄せる。/空調と遠い舞台の低音。
海「触れるな。カメラがある。」
蓮はカメラを確認したうえで、逃げずに海を見る。海は初めて端末を伏せず、素手側の手に下げる。/二人の呼吸。
蓮「じゃあ、なぜ俺を守る?」
海「守る以外、選べなかった。」
海が素手側の業務端末を蓮へ向ける。鏡室の報告一覧だけ。蓮は端末を受け取らず、海の声を聴く。/台詞は小声。端末は操作音を切った状態。
海「鏡室への報告。脅されてた。」
海「断れば、仲間の契約を切るって。」
海がEP03の送信履歴を開く。全文の対象欄「監視対象」を今回初めて見せる。「朝倉を外せ」の送信時刻はEP03の履歴。新規送信はしない。/指が履歴を開く小さなタップ音。
蓮「「朝倉を外せ」は?」
海「監視対象から、外せって頼んだ。」
海が端末を自分の素手側の外ポケットへ入れる。これで両手が空く。蓮は海の青髪に触れず、揺れる耳飾りを一瞬見てから目に戻る。/ポケットの布音。台詞の合間を0.4秒空ける。
蓮「嫌いだって、あれも嘘?」
海「嘘だ。君を見ないために言った。」
蓮は自分の右掌を開いて差し出し、海が選ぶのを待つ。海はうなずいて黒レースの手を上に置く。肯定の台詞が終わってから蓮が指を閉じる。/衣装と手袋の静かな布音。
蓮「触っていい?」
海「……いい。」
指がゆっくり絡む。蓮は手を引いて海を近づけず、等しい距離で立つ。海は息を吐き、笑う寸前で泣きそうな表情になる。/二人が同じタイミングで息を吐く。音楽はごく薄い一音のみ。
蓮「憎んだ時間、返して。」
海「これから、返す。」
蓮は海の手を握ったまま、自分でカメラを見上げる。海も続いて見る。二人ともすぐ手を離さない。誰かに奪われるのではなく、リスクを知って選ぶ瞬間。/空調音。終盤で海の携帯が二度振動。
蓮「一人で決めるな。二人のことだ。」
海は素手側の手でポケットの端末を出す。都から「開演前に、この写真を出せる」。添付は今の二人の絡めた指と顔、CAM04の固定角度の静止画。写真は業務メッセージ内だけ。握る力が強くなるところで暗転。/二度目の振動の余韻。BGMを切り、海の声と最後の呼吸のみ。
海「……もう、見つかった。」