『私を捨てた夫が、私の会社に面接に来た』第2話「浮気相手から、元妻に電話が来た』
——仕事は?
────────────────────────
面接と同じ日の夜、健太と梨花のアパート。最初の一秒は短い字幕「仕事は?」だけで、台詞はない。梨花がお腹の赤ちゃんのエコー写真を示す。一秒後から、健太と梨花の関係を一つの短い字幕にまとめて四秒間示す。梨花は赤ちゃんのための仕事について尋ね、健太は面接に落ちたと認める。三年前の関係の説明は次のカットの既存字幕に任せる。
佐藤 梨花「赤ちゃんのための仕事は?」
高橋 健太「面接、落ちた。」
梨花は健太の今の恋人で、三年前の浮気相手だと字幕で区別する。梨花はお腹の赤ちゃんのエコー写真を持ったまま今後を尋ねる。健太が面接で履歴書の嘘を認めたことは視聴者向け字幕だけで示し、梨花には知らせない。
佐藤 梨花「これから、どうするの?」
不採用を認めた後、健太は面接官が元妻の美咲だったと明かす。続けて「元妻の仕返し」だと言い張る。これは健太の言い分であり、梨花はまだ嘘だと知らない。
高橋 健太「面接官は元妻の美咲だ。元妻の仕返しだ!」
佐藤 梨花「美咲さんが?」
梨花がお腹の赤ちゃんのエコー写真を低い机に置いてから、健太のスマホを取り上げる。保存された美咲の番号を選んで電話する。お腹の赤ちゃんのエコー写真は最後まで低い机にある。
佐藤 梨花「まだ番号、入ってるじゃない。」
高橋 健太「おい、やめろ!」
*
同じ夜、人事部のオフィスで美咲が美咲のスマホへの着信に応じる。梨花が名乗る。隣にいる中村部長は美咲の上司であり、健太の元上司ではない。
高橋 美咲「はい、高橋です。」
佐藤 梨花の声が響いた。「梨花です。」
高橋 美咲「……梨花さん?」
梨花は「元妻の仕返し」で不採用にしたのかと問い詰める。まだ健太の言い分を信じている段階。美咲は、最終的に決めるのは人事部長で、自分は面接担当だと説明する。面接の録画が残っていることを字幕で示す。
佐藤 梨花の声が響いた。「元妻の仕返しで不採用にしたの?」
高橋 美咲「決めるのは、人事部長。私は面接担当よ。」
美咲は「元夫だと分かって、すぐ会社に知らせた」と梨花に説明する。美咲の上司・中村部長が隣の席から来る。美咲は面接の録画について説明を頼み、美咲のスマホを中村へ渡す。
高橋 美咲「元夫だと分かって、すぐ会社に知らせたわ。」
高橋 美咲「部長、お願いします。」
中村の。中村が「録画を見て不採用にしたのは、美咲さんでなく私です」と一行だけ断言する。美咲が決めたのではないことを、字幕を読まなくても台詞だけで理解できる。台詞を最初の4.2秒以内に終え、残り1.3秒は誰も話さない。中村は美咲のスマホを画面左端の美咲へ返し、美咲が耳に当てる。音楽を立ち上げ、今回唯一の感情の山にする。
中村 浩二「録画を見て不採用にしたのは、美咲さんでなく私です。」
*
同じ通話のままアパートへ戻る。梨花は健太のスマホで、不採用の理由を美咲に尋ねる。美咲は面接の中身を本人にしか話せないと答える。お腹の赤ちゃんのエコー写真は低い机にある。
佐藤 梨花「じゃあ、面接の何がダメだったんですか?」
高橋 美咲の声が響いた。「面接の中身は、本人にしか話せないの。」
梨花が健太に向き直り、「面接で何て答えたの?」と問い詰める。健太は答えられない。
佐藤 梨花「ねえ。面接で、何て答えたの?」
高橋 健太「そ、それは……」
梨花は、面接での答えを説明できない健太を見て、「仕返し」という話が嘘だったと静かに確かめる。健太は目を伏せたまま、ごく小さくうなずく。梨花は不採用が健太自身の答えによるものだと理解するが、履歴書の嘘の具体的な中身までは知らない。説明字幕は出さない。台詞は最初の3.5秒以内に終え、最後の一秒は静かに考える間とする。音楽は盛り上げない。
佐藤 梨花「仕返しって、嘘だったのね。あなたの答えが原因ね。」
梨花が電話の美咲に、明日のお昼に会社のロビーへ行くと告げる。そばで聞いていた健太は青ざめ、美咲に会わせたら全部バレるとつぶやく。
佐藤 梨花「明日のお昼、会社のロビーに行くから。」
高橋 美咲の声が響いた。「……分かったわ。」
佐藤 梨花「じゃあ、明日。」
高橋 健太「美咲に会わせたら……全部バレる。」