『私の部屋の鏡に、毎晩知らない女が映る』
——私の部屋の鏡に、毎晩知らない女が映る
────────────────────────
奈央が鏡の前に立ち、鏡の中の女だけが遅れて手を下ろす。
森川 奈央「え……今、遅れて動いた」
奈央がスマホで妹の千尋に電話し、鏡の話をする。
森川 奈央「姉の奈央。鏡に知らない女が映るの」
森川 千尋の声が響いた。「今夜そっちに行くね」
奈央が鏡の女に話しかけると、女がゆっくり首をふる。電話越しに妹の声が聞こえる。
森川 奈央「だれ? そこにいるの?」
森川 千尋の声が響いた。「妹の千尋。今夜行くから待って」
奈央が鏡から離れて震え、毛布を肩にかける。
森川 奈央「遅れて動く女……消えない」
ドアが開き、コート姿の千尋が入ってくる。
森川 千尋「ごめん、待った?」
奈央が鏡を見ると女が消えており、千尋の手に合鍵がある。
森川 奈央「消えた……その合鍵、どうしたの」
千尋が、毎晩合鍵で来て鏡越しに奈央を見ていたと打ち明ける。
森川 千尋「妹の千尋。毎晩ここに来てた」
森川 千尋「鏡ごしに、姉を見てたの」
奈央が泣きそうな顔で妹を見つめ、鏡の女の正体は妹だったと分かる。
森川 奈央「鏡の女は……千尋だったの」
奈央が妹の手を握って笑い、明日もおいでと言う。
森川 奈央「びっくりした。明日もおいで」