『嘘つきは選ばれない』第1話「靴を捨てた嘘つきは、カメラに映っていた』
——合宿1日目の夜
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アッシュグローブのアイドルオーディション合宿、1日目の夜。第1レッスン室。ノラ・ベルが空っぽの靴棚の前で青ざめる。ケイラ・プライスがゴミ箱の中のノラのダンスシューズを指差して笑い、シエナ・ヴァンスが腕を組んで見下ろす。
ケイラ・プライス「ノラ、探し物? ゴミ箱の中じゃない?」
シエナ・ヴァンス「靴もない子が、アイドル?」
アイヴィ・シンクレアがレッスン室に戻ってきて、ゴミ箱からノラのダンスシューズを拾い上げる。アイヴィ「捨てたの、誰?」シエナは肩をすくめてとぼける。
アイヴィ・シンクレア「捨てたの、誰?」
シエナ・ヴァンス「さあ? 自分で捨てたんじゃない?」
シエナとケイラは鏡の前で笑い合い、審査に向かってレッスン室を出ていく。
シエナ・ヴァンス「審査、楽しみにしてるね」
ケイラ・プライス「裸足で踊れば?」
泣きそうなノラに、アイヴィがダンスシューズを手渡す。アイヴィは棚の上の支給カメラを手に取る。赤い録画ランプが光っていた。アイヴィ「大丈夫。このカメラ、ずっと回ってた」
ノラ・ベル「もういい……私なんて」
アイヴィ・シンクレア「大丈夫。練習動画、毎晩提出でしょ? このカメラ、私の練習もずっと撮ってたの」
アイヴィとノラが審査ホールへ駆け込む。オーディション合宿の審査員長・ヴィクター・クレインが、審査員席から全員を見渡して告げる。
ヴィクター・クレイン「審査で嘘をついた者は、点も投票も関係なく即脱落だ」
レッスン室からの報告を受けたクレインが、ノラの靴の件を問いただす。ケイラは目をそらさずに嘘をつき、シエナは「何もしてない」と涼しい顔でかわす。
ヴィクター・クレイン「ノラ・ベルの靴が捨てられたと聞いた。誰だ」
ケイラ・プライス「知りません。見てもいません」
シエナ・ヴァンス「私は何もしてません。捨てたのは私じゃない」
アイヴィが前に出て、支給カメラの画面を審査員席へ向ける。そこには、ゴミ箱へ靴を投げ込むケイラがはっきり映っていた。
アイヴィ・シンクレア「今夜の練習動画です。提出します」
ヴィクター・クレイン「……再生しろ」
クレインが立ち上がり、ケイラを指差す。ケイラはシエナのほうを振り返って叫ぶが、誰も助けない。ケイラが審査ホールから出される。
ヴィクター・クレイン「ケイラ・プライス。審査で嘘をついたな。脱落だ」
ケイラ・プライス「待って、シエナが……!」
ヴィクター・クレイン「証拠を持ってこい。話はそれからだ」
シエナがアイヴィの横を通り過ぎざまに囁く。ケイラは利用されただけだった。アイヴィは支給カメラを握りしめ、まっすぐ見返す。
シエナ・ヴァンス「ケイラは利用されただけ。次に消えるのは、あなた」
アイヴィ・シンクレア「消えるのは、嘘つきの方」