『私を捨てた夫が、私の会社に面接に来た』第12話「もう一度、面接室で』
——1年後・美咲の会社の面接室
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最終話。1年後、美咲の会社の面接室。もう一度、面接室で。入ってきた応募者は、梨花だった。
佐藤 梨花「失礼します。佐藤梨花です。」
高橋 美咲「……佐藤さん。」
元夫の浮気相手が、美咲の会社の面接に来た。赤ちゃんは、実家の母に預けてきた。
佐藤 梨花「赤ちゃんは、実家の母に預けてきました。」
梨花は、美咲に選ばれたくて来たのではない、この会社で働きたいのだと言う。
佐藤 梨花「高橋さんに選ばれたくて、来たんじゃありません。この会社で、働きたいんです。」
梨花の「この会社で働きたい」を聞き、美咲は自分からこの面接を外れると告げる。ドアを開けて廊下に声をかけ、待っていた中村部長を呼び入れる。
高橋 美咲「私はこの方と、個人的なつながりがあるので、この面接から外れます。中村部長、お願いします。」
美咲に呼ばれて、中村部長が入ってくる。美咲と交代し、ここからは中村部長が面接をする。
中村 浩二「人事部長の中村です。ここからは、私が面接をします。」
*
美咲は面接室を出る。面接室の外の廊下で、自分は関係者だから外れたのだと、あの日の面接もこうするべきだったとつぶやく。
高橋 美咲「関係者だから、外れる。……1年前、私は元夫の健太さんの面接官だった。あの日も、こうするべきだったのね。」
美咲のスマホに、小野寺からの定期報告が届く。健太は謝罪文を出し、工場で働いて、お金を返し始めている。
高橋 美咲「1年前からお願いしていた、小野寺さんからの定期報告ね。元夫の健太は、謝罪文を出して、工場で働いて、返してるのね。」
しばらくして、梨花が面接室の外の廊下に出てくる。中村部長は面接室に残っている。梨花は、合格だと言われた。
佐藤 梨花「美咲さん。中村部長に、合格だと言われました。」
梨花は美咲に深く頭を下げる。1年前のことを謝り、外れてくれたこと、廊下で待っていてくれたことにお礼を言う。美咲は黙って、その言葉を受けとめる。
佐藤 梨花「あの時、美咲さんから健太を奪って、本当にごめんなさい。それから、外れて待っていてくれたこと、ありがとうございました。」
梨花が顔を上げる。美咲はほほえんで言う。私は何も決めてない。あなた自身の答えで決まったのよ。梨花は涙ぐみ、子どもを迎えに行くと告げる。
高橋 美咲「私は何も決めてない。あなた自身の答えで決まったのよ。」
佐藤 梨花「……そろそろ、子どもを迎えに行かないと。」
二人は初めて並んで笑う。美咲は採用の責任者として、このやり方を会社の正式なルールにした。(完)。
高橋 美咲「採用の責任者として、利害関係がある面接官は外れる——それを、会社のルールにしたの。中村部長も、賛成してくれた。」