『どちらの家にも、行きません』
——どちらの家にも、行きません
────────────────────────
無言の先行hook:母が二本の鍵を息子たちへ戻す。(冒頭では発話しない)。
戻された二本の鍵を手に、息子が母を見る。
都「どちらの家にも、行きません。」
兄が自分の鍵を机へ置き直す。
悠「一人じゃ、心配だから。」
弟がドアから入り、椅子を母へ近づける。
陸「俺の家なら、部屋もある。」
母が小さな工作箱を机へ置く。弟は左手前の画面端へ下がり、枠の外に出るが、声は届く位置にいる。
都「部屋はあっても、私の予定がない。」
兄が箱へ目を向ける。弟は画面外の左手前から声だけ返す。
悠「何がしたいの?」
陸「兄さん、母さんの前で、そういう聞き方する?」
母が工作箱の中身を示す。弟は画面外のまま、その声が聞こえる位置にいる。
都「人に、ものづくりを教えたい。」
都「前から、近くの空き店舗を探していたの。」
弟が枠へ戻り、机に残っていた二本の鍵を自分の前へ引き寄せる。兄は右にいる。
陸「どっちか一人を選ぶ話じゃ、ないんだ。」
母が工作箱から三本目の鍵を取り出し、自分の教室の鍵だと示す。弟は左手前にいる。
都「これは、私が自分で見つけた教室の鍵。」
兄が三本目の鍵を見つめる。
悠「もう、場所を見つけたの?」
母が嬉しそうに頷く。
都「近くの小さな教室。奥に住める。」
弟が母と同じ向きへ座る。
陸「通う道、一緒に確かめよう。」
弟が机の二本の鍵を自分の手に取り、母がその二本を指さして言う。三人が工作箱を囲む。
都「手伝って。でも選ばせて。その二本の鍵は、持って帰って。」