『毎晩となりの部屋から私の声がする、鏡の前で笑うのは誰』
——真夜中 アパートの一室 会社員・野々村真紀
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真紀が壁に耳を寄せ、となりの部屋から自分の声で「おやすみ」と聞こえて固まる。
野々村 真紀「今、私の声で「おやすみ」って…会社の同僚の理恵さんの部屋は、この壁のすぐ向こうなのに」
真紀が寝室の壁に手を当て、となりの部屋は空っぽで誰もいないと知る。声の正体は分からないまま。
野々村 真紀「壁の向こうのこの部屋は空き部屋で、誰もいない。そのまた隣が、同僚の理恵さんの部屋なのに」
寝室に戻った真紀の横で、鏡に一瞬だけ知らない笑顔が映る。
野々村 真紀「鏡の奥で、笑ってた…?」
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顔を洗いに来た洗面所の鏡には、自分しか映らない。
野々村 真紀「こっちの鏡は、私だけ…」
壁の向こうから理恵の声がして、真紀は洗面所で立ち止まる。理恵は空き部屋ではなく、壁続きの隣の部屋から話しかけている。
小柳 理恵の声が響いた。「毎晩、あなたの声が聞こえるの。今の「おやすみ」も、壁ごしに」
野々村 真紀「理恵さんの部屋は、空き部屋のそのまた隣なのに…」
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寝室に戻り、時計を見ると毎晩同じ時刻に声が聞こえると気づく。
野々村 真紀「寝室に戻って、時計を見ると…毎晩、この時刻に決まって」
鏡の前に立つと、また笑顔が映る。声が聞こえた瞬間と鏡を見た瞬間が同じだと気づく。
野々村 真紀「声が聞こえるのは、鏡を見てる時…鏡の中の笑顔が、だんだん私の顔に見えてくる」
鏡の中の笑顔が、よく見ると自分の顔だと確信する。
野々村 真紀「やっぱり、私だった。毎晩ここで笑って「おやすみ」って言ってたのは。その声が壁を通り抜けて、隣の理恵さんの部屋に届いてたんだ」
真紀は鏡の前で「おやすみ」と呟き、その声が壁を通り抜けてとなりの部屋へ届く。
野々村 真紀「おやすみ。…この声が壁を通り抜けて、となりの部屋まで届いてたのね」
小柳 理恵の声が響いた。「今夜も、聞こえたよ」
壁の向こうで理恵がその声を聞き、真紀は鏡の中の自分と微笑み合う。
小柳 理恵の声が響いた。「今夜も、聞こえたよ」