『最後のベルを、二人で鳴らす』
——最後のベルを、二人で鳴らす
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無言の先行hook:亮が片付ける葵の手を止める。(冒頭で短く名を呼ぶ)。
葵「亮、もう店じまいだね。」
亮「僕は、まだ終えたくないんだ。」
弟が片付ける姉の手を止める。
亮「まだ、ベルをしまわないで。」
姉が段ボールへ目を落とす。
葵「もう、誰も来ないよ。」
弟が二つのカップを残す。
亮「最後の客が、まだなんだ。」
姉が客席を見る。
葵「誰と、約束したの?」
弟が一方の椅子を引く。
亮「母さんに、いつか休みに来てって言いたかったんだ。」
姉が弟の前へ立つ。
葵「店を閉めたら、会いに行ける。」
弟がエプロンの結び目に触れる。
亮「母さんを、この店に誘えなかった。最後の客にしたかったのに。」
姉が客席へ座る。
葵「じゃあ、今日は私が最後の客。」
弟がカップを一つ持つ。
亮「ご注文は。」
姉が隣の椅子を引く。
葵「あなたも座って飲める、カップ二つ。」
弟がベルとカップをカウンターに置き、エプロンを外して椅子の背に掛け、姉の隣に座る。
亮「じゃあ、店を閉めよう。」
感動の山: 姉弟が並んで最後のベルを一緒に押し、澄んだ音を聞く。
葵「二人で、最後のベルを。」