『元彼が毎日買う一輪の花、その理由は母の頼みだった』
——秋野花店・午後
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カウンターに立つ美咲の前で直樹が「いつもの」と言い、一輪の花を差し出す。
白石 直樹「いつもの、お願いします。」
秋野 美咲の声が響いた。「また来たんだ。」
美咲が一輪の花を受け取り、複雑な表情でつぶやく。
秋野 美咲の声が響いた。「元彼なのに、毎日ずるいよ。」
直樹が静かに代金を置き、短く会釈して去ろうとする。
白石 直樹「また明日。」
秋野 美咲「……毎日来る理由、聞いてもいい?」
美咲がカウンターの花を見て、三年前の別れに思いを巡らす。
秋野 美咲の声が響いた。「元彼なのに、毎日ずるいよ。」
レジ横の小さな白いメモに美咲が気づき、手に取る。
秋野 美咲「なに、これ。……「この人に、毎日お花を届けて」って。」
メモを開くと母・春子の筆跡。美咲はメモの文字を目で追いながら、母が直樹に頭を下げて頼んだ姿を思い浮かべる。
秋野 美咲の声が響いた。「母の字だ。……この人に、毎日お花を届けて。母が、この人に頼んだの。」
美咲がメモを胸に当て、母の頼みを知って涙ぐむ。
秋野 美咲の声が響いた。「そうだったのね。母が頼んだって。」
翌日、直樹が店に来て「今日で約束は終わり」と告げる。
秋野 美咲「メモ、読んだの。」
白石 直樹「美咲さんの母の頼みで、毎日買ってた一輪の花。一か月と決められていて、今日が最後です。」
美咲が「母に頼まれたの?」と問い、直樹が静かにうなずく。
秋野 美咲「やっぱり、そうだったのね。」
白石 直樹「はい、毎日買ってました。」
直樹が最後の一輪を差し出し、美咲が受け取る。二人が微笑む。
白石 直樹「これからは、自分のために。」