『私のミスを、返してください』
——私のミスを、返してください
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無言の先行hook:上司が一枚の報告用紙を押し出す。(冒頭では発話しない)。
上司が一枚の報告用紙を押し出す。
奈央「私の誤字を直して、訂正報告したいんです。」
坂井「責任は全部、君でいいね。」
担当者が青いファイルを開く。
奈央「私の誤字は、私が直して訂正報告します。」
上司が別の用紙を重ねる。
坂井「会場の変更は、俺の承認だ。」
上司が重ねた二枚を、自分の手で横に分ける。担当者は指で示す。
奈央「会場を変えたのは、誰ですか。」
上司がペンを握り直す。
坂井「そんな言い方なら、次の仕事はない。」
上司が自分の手で承認の入った紙を担当者へ向け、担当者が指で承認欄を指す。
奈央「この承認欄、あなたの字です。会場を変えたのは、あなたです。」
上司が椅子へ深く座る。
坂井「今さら、責めたいのか。」
担当者が上司の手から二枚の紙を受け取り、机に並べる。
奈央「違います。直す前に、間違いを分けたい。私の誤字と、そちらの確認漏れです。」
坂井「……わかった。では、二人で説明に行こう。」
奈央「訂正報告は、私の誤字は私が、確認漏れはそちらの名前で出します。」
上司が誤字の紙へ手を伸ばす。
坂井「俺の確認漏れは、俺が説明する。君の誤字は、君が直してくれ。」
担当者が誤字の紙を自分の前へ戻す。
奈央「私の誤字は、私に返してください。」
上司がペンを机に置く。
坂井「……ああ。君の誤字は、君のものだ。二人で、説明しよう。」
二人が同じ側へ椅子を動かす。上司が誤字の紙を担当者へ返し、担当者が青いファイルに収める。
奈央「私の誤字は、私が直します。」