『採点する人から、洗ってください』
——また洗い直し?
────────────────────────
英子が皿の裏のふちの洗い残しを示して里帆へ差し出し、流しを指す。里帆は里帆の湯飲みを持ち、皿を受け取らない。英子の採点表も見える。
義母が一枚の皿を妻へ差し戻す。
英子「里帆さん、このお皿、洗い直し。」
妻が夫へ視線を向ける。
里帆「洗ったのは、航です。」
航が洗った皿だと聞いても、英子は里帆に仕上げを求める。英子の採点表を持ったまま布巾を差し出すが、里帆は受け取らない。
英子「あら。でも、仕上げはあなたが。」
座ったままの航は里帆に仕上げを任せようとする。里帆は仕上げを断り、航が洗った皿を流しのそばへ運ぶためだけに受け取る。
航「それぐらい、やってよ。」
里帆「航、自分が洗った皿は自分で仕上げて。」
妻が皿を持ったまま流しへ向き直る。
里帆「二人とも、基準は同じですよね。」
里帆は皿を流しのそばに置き、仕上げを引き受けずに役割を問い直す。言い方は実務的で、勝ち誇らない。台詞の後に長い間を置かず、英子の返答へつなぐ。音楽は盛り上げない。
里帆「採点するなら、採点した本人が先に洗ってください。」
義母が布巾へ手を伸ばし、取らずに置いたままにする。
英子「私は、教えてあげてるの。」
里帆は航の椅子を示し、航が洗った皿だから、教える相手も航だと直接つなぐ。
里帆「なら、洗った航に教えてください。」
航が洗った皿を、差し戻されてから初めて航自身が取る。航には洗い残しの場所が分からない。誰も笑わず、教わる必要を静かに示す。
航「洗い残し、どこか分からない。」
英子の採点表を伏せ、採点をやめて、航に教える。s01で示した皿の裏のふちの洗い残しを再び示し、航が洗い残しを指で確かめる。結末ではなく、航が自分でできるようになるための途中の変化。音楽の盛り上がりや決め台詞の間は置かない。
英子「航、皿の裏のふちの洗い残しを、指で確かめて。」
英子は布巾で一度だけ手本を見せる。洗い直し全部が終わったわけではなく、続きは航自身が行う。里帆は里帆の湯飲みを持って一歩下がり、仕上げを引き受けない。
英子「布巾で一度、手本を見せるね。続きは航がやってみて。」
里帆「次から、仕上げも本人で。」
座ったまま里帆に任せようとした航が、今度は自分から皿を持って立ち、今日から片付けを引き受ける。里帆は里帆の湯飲みを持ったまま、手を出さずに見守る。ここだけを感情と音楽の頂点にする。
航「今日は俺が片付ける。」