『MY IDOL HATES ME』第9話「鏡室』
——セナ(作曲・最年長)
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セナの二本の指が同じ番号で止まる。二つの紙の色を変え、原帳と写しを識別する。/指が紙を叩く二音。
セナ「同じだ。」
セナが同一研修費の二つの計上を指し、律が自分の送金控えをその下へ置く。/舞台準備の遠い足音。
セナ「ユウの未払い。律の立替済み。」
律「一件が、二つに?」
汐が付箋の付いていない訂正欄を示す。セナは都から持ち出された写しの封筒『317』に目を落とす。/原帳の厚いページを押さえる音。
汐「原帳も同じ番号。訂正は入ってない。」
セナ「控えの場所、知ってて黙ってた。」
セナは冗談を挟まずユウに向き直る。ユウは机の端を離し、正面から聞く。/遠い音楽チェックを止め、二人の声を露出させる。
セナ「鏡室を設計した。俺も、数字を見てた。」
ユウ「俺たちを、点数にした?」
セナが掌を開き、何も持っていないことを見せる。ユウは明細を一枚自分で揃え、茶封筒の上へ戻す。/舞台の呼び出しベルが一度、遠くで鳴る。
セナ「投稿を拾って、騒ぎの順番を決めた。」
ユウ「なら、俺の声で訂正する。」
都は舞台方向を示す。律は原帳を閉じて管理担当者へ返し、P03の写しを『317』へ戻す。原帳と封筒の受け手を一画面で区別する。/原帳を閉じる重い音。
都「帳簿を戻して。すぐ出番よ。」
律「原帳は戻す。この控えは預かる。」
汐は『独立制作組合/資料受付』の連絡先だけを表示。まだ送信せず、セナへ画面を向ける。セナは自分の名を記すため白紙を受け取る。/携帯の操作音は消す。肉声のみ。
汐「公開前に、記録を確認してもらう。」
セナ「俺が関わった範囲も、名前つきで。」
伊織が掌を上げる。律はP03を袖の保管棚に置き、汐がその棚の前に立つ。九人が歩いて舞台の立ち位置へ。特定の実在振付を使わない。/九人の靴音が順に重なる。
伊織「九人、位置へ。」
都が音響担当へ短く命じる。担当の指が『MUSIC』と記したフェーダーへ移動。『VOCAL』には触れない。舞台カウントが3を表示する。/クリックのカウントは袖だけに小さく。
都「音を止めて。」
汐のカウントで照明が点く。オリジナルの短い導入音が半拍鳴ったところで音楽だけが落ちる。九人は立ち位置を崩さず、伊織の掌を見る。/汐の業務カウント。導入音は70.8秒から71.4秒で急停止。残るのは客席の衣擦れと息。
汐「3、2、1。」