『合否は、私も出せます』
——面接室——この会社では、清掃員に椅子は出さない。
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無言の先行hook:面接官が清掃員用の椅子を脇へ動かし、清掃員が布巾を持って立ったまま頭を下げる。応募者の沙耶がそれを見ている。(冒頭では発話しない)。
面接官が脇へ寄せた椅子のそばに立ち、清掃員を見て言う。
藤堂「清掃の人は、立ってればいい。」
沙耶の声が響いた。「(この人の、働く環境を見たい)」
清掃員が布巾を持って立ったまま小さく頭を下げる。応募者が自分の椅子を清掃員へ向ける。
沙耶「私の椅子を、どうぞ。」
清掃員が布巾をきゅっと握り直す。
和江「いえ、すぐ終わりますから。」
面接官が応募者へ視線を戻す。
藤堂「君、面接中なんだけど。」
応募者が立ったまま尋ねる。
沙耶「謝る間も、座れないんですか。」
面接官が書類を閉じる。
藤堂「椅子の一言で、もう辞めるのかい。」
清掃員が出口へ半歩踏み出して立ち止まる。
和江「清掃は、私が最後にします。」
応募者が出口を塞がず脇へ避ける。
沙耶「では、お先にどうぞ。」
面接官が椅子へ背を預ける。
藤堂「それだと、採用は難しいよ。」
応募者が自分の鞄を持つ。
沙耶「この会社の態度を、見ていました。」
面接官が応募者を見上げる。
藤堂「判断するのは、こちらだ。」
清掃員が出口から振り返り、応募者が一礼して清掃員へ会釈する。言い終えた後、応募者は静かに清掃員へ目を向けたまま、言葉のない間が流れる。
沙耶「こんな会社で働きたくない。御社は、不合格です。」
沙耶「私は辞退します。」