『記憶を失った夫に、私は毎晩夕食を届けた』
——夜・史帆の家(夫の幸人の妻・史帆)
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夜のダイニング、史帆が一人で食卓に向かう。食器は二人分並んでいる。
小柳 史帆「今日も、来たね」
史帆は自分の分だけ食べ、目の前の夕食には手をつけない。
小柳 史帆「私は、食べないけどね」
史帆が冷蔵庫のメモを見る。
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翌朝、病院の食堂で配達係の真由が史帆に声をかける。
平井 真由「病院の食堂の配達係・真由です」
平井 真由「今夜も、ご主人の夕食を届けますね」
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夜、退院した記憶を失った夫の幸人が家に帰ってくる。
小柳 幸人「ただいま。……ここ、俺の家なんだよね」
幸人が席に着き、史帆は自分の夕食を幸人の前に置く。
小柳 幸人「これ、病院の食堂の夕食だね」
小柳 史帆「毎晩、二人分を届けてもらってたの」
小柳 史帆「あなたの分も、ずっと一緒に食べてた」
小柳 史帆「食べてみて」
幸人が一口食べて、箸を止める。
小柳 幸人「この味、知ってる」
小柳 幸人「毎晩、俺の隣で誰かが食べてた味だ」
史帆が冷蔵庫のメモを見せる。
小柳 史帆「これ、病院の食堂のメモ」
史帆が涙をこらえて告げる。言い終えたあと、静かな間が残る。
小柳 史帆「あなたのごはん、毎晩私が届けてたの」
幸人も笑い、二人で食卓を囲む。
小柳 幸人「うん、思い出した気がする」