『試食は、二回まで』
——店主・栞/応募者・千夏
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店主が小さなスープを一杯差し出す。応募者が少し緊張して座っている。
栞「店主の栞です。応募の千夏さんね。本音でお願い。」
店主が小さなスープを一杯差し出す。
栞「あなたの試食は、二回までです。」
応募者が飲み、無理に笑う。
千夏「おいしいです。」
店主が自分も一口飲む。
栞「本当に? もう一度だけ聞く。」
応募者が無理な笑顔をやめ、店主を見て正直に答える。店主はスープのカップを持ったまま聞く。
千夏「……しょっぱいです。正直に言うと、しょっぱいです。これで一回目。」
店主が塩の小皿へ目を向ける。
栞「採用されたいから、黙った?」
応募者が水差しを見つめる。
千夏「作った人を、傷つけたくなくて。」
店主が水差しを近づける。
栞「正直に言ってくれて、ありがとう。」
応募者がカップを手元へ戻す。
千夏「このスープは、おいしくないまま出しません。」
店主が、二回目の試食用の空のカップを手に持ち、応募者に示す。まだカウンターには置かない。
栞「どう直す? 二回目は、このカップに。」
応募者が水を少量加える。
千夏「まず薄めて、味を確かめます。」
店主が二杯目のカップをカウンターに置き、右手で塩の小皿に手を伸ばして取り、カウンターの脇へ避ける。
栞「私も、塩を量り直す。」
二人が新しいカップを挟んで頷く。
千夏「二回目は、本音で。」