『合否は、私も出せます』
——座れないの?
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冒頭1秒は「座れないの?」だけを表示し、音声なし。藤堂が和江の椅子を壁際へ動かす。和江は和江の布巾を手に持ち、立ったまま頭を下げる。沙耶が見ている。1秒より後に、それぞれ本人に対応する紹介字幕を表示し、沙耶の心の声で「座れないの?」と重ねる。
沙耶の声が響いた。「座れないの?」
冒頭から藤堂の紹介と沙耶の望みを字幕で示す。藤堂は立ったままの和江へ言う。和江の椅子は壁際。和江の布巾は引き続き和江の手にあり、机には置かない。
藤堂「清掃の人は、立ってればいい。」
和江は立ったまま謝る。壁際の和江の椅子と和江の姿を見た沙耶が、沙耶の椅子を和江へ向けてすすめる。和江の布巾は和江の手にある。
和江「すみません。」
沙耶「私の椅子を、どうぞ。」
和江は和江の布巾を握り直し、沙耶の椅子のそばでためらって断る。座らず、立ったまま。
和江「いえ、すぐ終わりますから。」
藤堂が沙耶へ視線を戻し、面接中だと注意する。和江は立ったまま。和江の布巾は和江の手にあり、机には置かない。
藤堂「君、面接中なんだけど。」
沙耶が立ったまま、和江を座らせない扱いについて尋ねる。和江が謝る理由は説明しない。和江の布巾は和江の手にある。
沙耶「謝る間も、座れないんですか。」
沙耶の問いを受けて藤堂が書類を閉じる。和江の椅子は壁際、沙耶の椅子は和江へ向けたまま。和江の布巾は和江の手にある。
藤堂「椅子のことで、面接を止めるのかい。」
和江が出口へ半歩進んで止まる。室外へは出ない。和江の布巾は和江の手にある。
和江「ここは、あとで清掃します。」
沙耶が出口を塞がないよう脇へ避け、和江に道を譲る。和江は室内の出口付近にとどまる。和江の布巾は和江の手にある。
沙耶「では、お先にどうぞ。」
藤堂が藤堂の椅子に座って背を預け、採用は難しいと告げる。まだ不採用の通知ではない。和江の椅子は壁際。和江の布巾は和江の手にある。
藤堂「それだと、採用は難しいよ。」
沙耶が鞄を持ち、人を大切にする会社で働きたいという望みに照らして、見ていた会社の態度を判断する。まだ入社していない沙耶は、人を大切にしない会社では働かないと決める。和江の布巾は和江の手にある。
沙耶「この会社の態度を、見ていました。」
座った藤堂が沙耶を見上げ、「判断するのは、こちらだ」と言う。和江は室内の出口付近にいる。和江の布巾はまだ和江の手にある。
藤堂「判断するのは、こちらだ。」
藤堂の採用は難しいという言葉と、判断するのはこちらだという主張を受け、沙耶自身が会社を選ぶ。「御社は、不合格です。私は辞退します。」と一行で言い切り、面接を辞退する。和江が和江の布巾を作業着のポケットへしまい、室内の出口から振り返る。沙耶が一礼し、和江と敬意のこもった会釈を交わす。最後の1.2秒は無言で視線を合わせる。藤堂は座ったままで態度を変えない。
沙耶「御社は、不合格です。私は辞退します。」