『毎朝同じ電車の彼に告白したら、「今日で365回目です」と言われた』
——クリスマスまでに、と決めて、一年間毎朝同じ電車で見ていた人に告白した春。返ってきたのは「今日で365回目です」。彼は同じ朝をくり返していて、8時42分、次の駅で春が死ぬのだと言う。
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クリスマスまでに、と決めて、一年間毎朝同じ電車で見ていた人に告白した春。返ってきたのは「今日で365回目です」。彼は同じ朝をくり返していて、8時42分、次の駅で春が死ぬのだと言う。
水野 春(lead / 会社員。一年間、同じ車両の同じ扉に乗っている)。
瀬名 樹(lead / 同じ朝を365回くり返している会社員)。
満員の朝の電車。吊り革を握った春が、真っ赤な顔で目をつぶって何かを言い切る。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『毎朝同じ電車の彼に、告白した。』。
樹が本を閉じ、疲れた目で少しだけ笑う。
瀬名 樹「知ってます。今日で、365回目です。」
題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『毎朝同じ電車の彼に告白したら、「今日で365回目です」と言われた』。
*
一年間の朝。扉の横の春が、本を読む樹をそっと見ている。12月。クリスマスまでに、と決めた。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『クリスマスまで あと24日』。
水野 春は胸の奥で呟いた。——一年間、同じ車両の同じ扉。クリスマスまでに、絶対に告白するって決めてた。
満員電車が揺れる。倒れかけた春を、樹が片腕で抱きとめる。胸に顔がうずまる。
水野 春は胸の奥で呟いた。——名前も知らないのに、この腕の温かさだけは知ってた。
春が混乱して聞き返す。
水野 春「365回目って……何?」
樹が静かに言う。
瀬名 樹「僕は、今日を365回くり返してる。」
*
その瞬間、空気が凍りついた。樹の腕時計。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『8:36』。
瀬名 樹は胸の奥で呟いた。——8時42分。次の駅で、君は階段から落ちる。
その瞬間、空気が凍りついた。春の顔から血の気が引き、こわばる。
水野 春「……私が、死ぬの? 怖い……」
樹が拳を握る。
瀬名 樹「364回、助けられなかった。何をしても。」
樹が覚悟を決める。
瀬名 樹「だから今日は、君を降ろさない。」
*
窓の外、ホームが近づく。ブレーキ。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『8:41』。
ドアが開く。降りようとする春の手首をつかみ、樹が反対側の扉に押しとどめる。顔が近い。
瀬名 樹「降りないで! だめだ!」
振り向いた春の目は、まっすぐで、濡れている。
水野 春「降りるのは、本当はあなたでしょ。嘘つき。」
樹が固まる。
瀬名 樹「……え? なんで、それを?」
*
春の手の小さなノート。見開きいっぱいの線。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『364』。
水野 春は胸の奥で呟いた。——私も、364回、覚えてる。
春がまっすぐに言う。
水野 春「階段の事故で私をかばって、死ぬのは毎回あなたなの。」
樹が息をのむ。
瀬名 樹「毎朝の告白は……」
春が言い切る。
水野 春「あなたが好きだから。この電車に、引き止めたかった。」
8時42分、ドアが閉まる。春が樹の袖を引いて車内に戻す。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『8:42』。
その瞬間、空気が凍りついた。走り出した電車の中。春がつま先立ちで樹にキスする。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『くり返していたのは、二人ともだった。』。
水野 春は胸の奥で呟いた。——366回目の今日は、二人で笑って降りよう。大好き。
日常のわずかな綻びから始まった『毎朝同じ電車の彼に告白したら、「今日で365回目です」と言われた』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。