『狐の花嫁 第3話「提灯職人の約束』
——三百年前。提灯職人の藤次は、雨の夜に傷ついた黒狐を拾った。二人の祝言を矢が裂く。現在、朔は同じ夢で泣いて目覚める。
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三百年前。提灯職人の藤次は、雨の夜に傷ついた黒狐を拾った。二人の祝言を矢が裂く。現在、朔は同じ夢で泣いて目覚める。
千歳(lead / the fox bride)。
篝 朔(lead / onmyoji assassin, reincarnation of Tōji)。
藤次(past life of Saku (300 years ago); lantern maker and secret archer of the Bureau)。
雨宮 律(antagonist / director of the Bureau (陰ノ司))。
尾白(Chitose's guardian, a small old white fox)。
夜。灯った紙の提灯を矢が貫く。
三百年前。雨の夜の提灯工房。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『三百年前』。
藤次が竹の骨に紙を貼りながら鼻歌を歌う。
軒下で震える、傷ついた小さな黒狐。
藤次がしゃがみ、手を差し出す。
藤次「入りな。濡れちまうぞ。」
*
作りかけの大きな提灯の中で丸くなる黒狐。藤次が笑う。
季節が巡る。人の姿の千歳が提灯に絵付けを手伝い、二人で笑う。
提灯の明かりの下、藤次が言う。
藤次「祝言を挙げよう。三つの盃で。」
千歳の戸惑い。
千歳「人と盃を交わした狐など、聞いたことがありません。」
藤次が笑う。
藤次「じゃあ、俺たちが最初だ。」
*
ひそかな祝言。二つの盃が空き、三つ目が持ち上がる。
雨の屋根の上、頭巾の射手が弓を引く。
矢が飛ぶ。藤次が千歳の前に身を投げる。
三つ目の盃がこぼれ、畳に赤くしみる。
倒れた藤次が、かすれた声で。
藤次「……生まれ変わっても、見つけるから。」
*
現在。朔が夜明けに飛び起きる。頬に涙。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『現在』。
朔が自分の涙に触れる。
篝 朔「……なんで、泣いてる。」
戸口で湯呑みを持つ千歳が静かに見ている。
千歳「怖い夢でしたか。」
朔が答える。
篝 朔「矢の夢だ。射手の顔が見えなかった。」
千歳の表情が一瞬だけ凍り、すぐ微笑みに戻る。
*
(回想)屋根の上の射手が、頭巾に手をかける。
頭巾の下は、藤次の顔。
現在の千歳が小さくつぶやく。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『つづく』。
千歳「覚えていなくていいの。」
日常のわずかな綻びから始まった『狐の花嫁 第3話「提灯職人の約束』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。