『私を捨てた夫が、私の会社に面接に来た』第5話「元夫が、元妻に借金を頼みに来た』
——次の日の夕方・美咲の会社の前
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第4話の次の日の夕方、美咲の会社の前。元夫が、元妻に借金を頼みに来た。仕事帰りの美咲の前で、健太がいきなり歩道に土下座する。
高橋 健太「頼む、美咲! 100万円、貸してくれ!」
健太は顔を上げ、生まれてくる子どものためのお金だと言う。
高橋 健太「梨花に、子どもが生まれるんだ。その子のための金なんだよ。」
高橋 美咲「子どものため?」
美咲は、お金は貸せないと断る。健太は、元夫婦だろうと食い下がる。
高橋 美咲「お金は貸せません。私たちは、もう他人よ。」
高橋 健太「冷たいな。元夫婦だろ。」
健太は両手を広げて大声を出し、通りの人の目を集めようとする。美咲は動じない。
高橋 健太「みなさん! この女は、困ってる元夫を見捨てるんです!」
高橋 美咲「大声を出しても、答えは変わらない。」
腕を振り回した拍子に、健太の黒い鞄の口が開き、赤いハンコの押された督促状が歩道に落ちる。
高橋 健太「あっ……!」
美咲が督促状を拾って読む。借りたお金を、早く返すように求める紙だった。
高橋 美咲「督促状……。宛名は、健太。あなたが借りたお金を、早く返せという知らせね。」
美咲は、お金は子どものためではなく、健太自身の借金を返すためだと見抜く。健太はうろたえる。
高橋 美咲「子どものためじゃない。自分の借金を返すお金ね。」
高橋 健太「ち、違う……」
美咲は自分のスマホを見せる。ゆうべ、名刺を見た梨花から届いたメッセージ。お金は1円も頼んでいない。
高橋 美咲「ゆうべ、梨花さんから連絡が来たわ。「健太のお金は、1円も頼んでいません」って。」
美咲は督促状を健太の胸に押し返す。お金は貸さない。子どものお金は、梨花さんに直接きちんと払って。
高橋 美咲「お金は貸さない。子どものお金は、梨花さんに直接、きちんと払って。」
美咲は背を向けて、会社の中へ戻っていく。健太は歩道に取り残される。
高橋 健太「おい、待てよ、美咲!」
一人になった健太は、督促状を握りつぶし、スマホを取り出す。
高橋 健太「見てろよ、美咲……。」
健太がスマホで音声を流す。あの面接を、こっそり録音していたのだ。美咲の声の途中で止め、にやりと笑う。
高橋 美咲「あなたが私を捨てたことと、面接に落ちたことは……」
高橋 健太「ここで切れば、仕返しに聞こえるな。」