『予約席の、書きたくない名前』
——紗季・修司の娘、倉庫で働く
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無言の先行hook:娘が作業着の上着を脱いで椅子の背に掛け、父がそれを椅子の陰へ押し込む。(冒頭では発話しない)。
父が椅子の陰の作業着をさらに奥へ押し込む。
修司「仕事のことは、黙ってて。紗季。」
修司「父さんが、恥ずかしいだけだ。」
娘が隠された袖を取り出す。
紗季「私、嘘をつきに来たの?」
父は空席の名札を整え、娘の名札をポケットにしまう。
修司「相手の家は、立派だから。名札も、しまっておく。」
娘は立ったまま、作業着の袖を握りしめる。
紗季「倉庫の仕事は、立派じゃない?」
父が視線を落とす。
修司「そういう意味じゃない。」
娘は座らず答えを待つ。
紗季「じゃあ、どういう意味?」
父が、隠していた本当の気持ちを初めて口にする。
修司「俺が、比べられるのが怖い。」
娘は立ったまま、取り戻した作業着を前腕に掛け直す。
紗季「隠すのは、私じゃなくてその気持ち。」
父が娘の目を見る。
修司「紗季。仕事、好きか。」
娘が小さく頷く。
紗季「誰かの明日に、荷物を届けてる。」
父が娘の名札を返し、もう娘を隠さないと伝えて、紗季の父として名乗る。
修司「もう隠さない。紗季の父、修司だ。」
娘は椅子の背の作業着を取って両袖に腕を通し、初めて自分の席に座る。隣の椅子は空けたまま、向かいの父に声を掛ける。最後まで作業着を着ている。
紗季「私が話す。隣にいて。」