『MY IDOL HATES ME』第2話「見られている』
——蓮(9人組アイドルの新センター)
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蓮の小さな倒立像がレンズの中を横切る。赤い状態灯と、レンズ上の固定された白い擦り傷を映し、監視の物理的な装置と示す。/短い電子通知音。
蓮がブローチをカメラから隠すように握る。律は背後から顔だけ近づけ、肩は触れない。/足音が止まる。低い声。
律「ここ、見られてる。」
蓮「誰に?」
律は答えず、開かれた蓮の掌を見る。317に気づくが取り上げない。蓮は数字を隠す手を緩める。/空調音。遠くで機材ケースの車輪。
律「その番号、誰からだ。」
蓮「海。説明は、なかった。」
蓮はブローチを胸の黒リボンに留め直す。律は確認のため留め具を指差すだけ。留め終えた蓮が律を見る。/ピンの留まる音。
蓮「律も、何か知ってる?」
律「知らない。だから、確かめろ。」
律が歩幅を落とす。奥に317。海はいない。律はカメラの正面に立ち止まり、蓮は律の体の陰からロッカー列へ入る。/二人の靴音を区別する。律は硬い音、蓮は軽い音。
律「317は、この先の預かり棚だ。」
蓮「俺のために、隠れてるの?」
律がカメラの向きを一瞥。機器には触れない。廊下の呼出表示器に「久世 律/衣装確認」。短い二音の呼出チャイム。律は蓮に短くうなずく。/呼出チャイム。台詞の前に止める。内容を聴き取れるスタッフの台詞は入れない。
律「俺が呼び出しに答える。今のうちだ。」
律が廊下へ戻る足音。蓮は引く前に取っ手の埃を確認する。新しい指跡がある。胸のブローチを左手で一度押さえる。/取っ手の小さな軋み。
蓮「ここに、何を残した?」
扉が指一本分開く。中には白い無地封筒が一通。半開きの口から赤いカードの角だけが見える。茶色の封筒や台帳は映さない。/蓮が息を止める。建物の環境音を細くする。
蓮「赤い……カード?」
蓮は扉を広げようとし、背後の足音に気づく。自分の手は取っ手に置いたまま。画面奥の黒い袖と青い髪だけが焦点外に入る。/足音が一歩で止まる。音楽なし。
蓮「律、戻ったの?」
蓮の背後に海。青髪と基準画像と同じ側の黒レース手袋。手は蓮や扉をつかまず、自分の脇に下げたまま。蓮の指は開いた取っ手に止まる。赤い角を隙間の最下部に残して切る。/海の低い声。直後に廊下の呼び出しが途切れる。
海「開けるな。」