『毎晩届く夫の夕食、私は食べていない』第1話「毎晩の夕食、私は食べていない』
——私の分はお供え?
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最初の一秒から、眉を寄せて唇を震わせる洋子の顔を大きく映し、「食べられない!」の字幕を出す。洋子は夕食を指して「私だけ、食べられない」と切迫した声で訴える。夕食を運んできた修の手が食卓の上で止まる。一秒後に夫婦の名前を表示する。
秋野 洋子「私だけ、食べられない。」
修が黙って夕食を置き、独り言のように言う。
秋野 修「これは、夫の俺から洋子への夕食だよ」
秋野 洋子の声が響いた。「毎晩、私の夕食を置くのね」
洋子が首をかしげ、なぜ自分は食べないのかと尋ねる。
秋野 洋子「目の前にあるのに、どうして食べられないの?」
修が顔を上げずに答える。
秋野 修「君のぶんは、もう供えてあるんだ」
洋子が食器棚の写真立てを指さす。
秋野 洋子「これ、私の遺影なの?」
秋野 修の声が響いた。「君を忘れないように、飾ってるんだ。」
修が立ち上がり、線香を手に取る。
秋野 修「君に食べてほしくて、毎晩供えてるんだ。」
線香に火が灯り、煙が立ち上る。
秋野 修「線香をあげて、君を思い出すんだ。」
洋子が鏡を見つめる。鏡には食卓と修だけが映る。
秋野 洋子「修は映ってるのに、私だけ映ってない。」
修が線香を立て、静かに言い切る。
秋野 修「洋子、君が亡くなって一年。幽霊だから、食べられないんだ。」
洋子が修を見つめ、微笑んだまま無言で消える。修が空いた隣へ目を向けると、すぐ耳元から洋子の声で「消えても、ここにいるわ。」と聞こえる。修の顔が恐怖でこわばる。最後の二秒は無言で、誰もいない隣を見つめる修を捉える。
秋野 洋子の声が響いた。「消えても、ここにいるわ。」