『神託機関/ツクヨミ』第4話「承認の声は、一年前のミオだった』
——配管通路の出口/執行官イサク
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配管通路の出口。赤い光の差す積み込み口から、執行官イサクが電子式執行銃を構えて通路口に踏み込み、立ちはだかる。
イサクの声が響いた。「AIの命令だ。二人とも、動くな!」
ミオはまだもう一人のまま、イサクの銃を持つ手を見つめている。レイが名前を呼ぶと、ミオの目が一瞬揺れ、首の傾きがまっすぐに戻って、ミオに戻る。ヨミが奥へ引っ込み、ミオがこめかみに手を当てる。恋人に裏切られたと知ったばかりのミオは、レイから一歩離れて立つ。
レイの声が響いた。「ミオ!」
イサクの声が響いた。「レイも逮捕する。」
レイ「名前を呼べば、君の中のヨミは引く。」
ミオ「……戻ったの?」
レイが両手を上げる。ミオは傷ついた顔のまま、恋人を見る。
レイの声が響いた。「君の声の録音を売った。でも、街は壊してない。」
ミオの声が響いた。「……あなたは、私を裏切った。」
イサクの執行銃の小さな表示が赤く光る。銃の側面にAIの赤い月が映る。
ツクヨミ(AI)の声が響いた。「執行官イサク。中央の許可は完了。巫女の音声承認を送信します。」
イサクの銃のスピーカーが赤く光り、そこからミオの声が流れてロックが外れる。ミオは口を閉じたまま、イサクを正面から見る。
ミオの声が響いた。「射撃を承認します。」
イサクの指が引き金にかかる。だが、口を閉じたミオと銃から流れる声を見比べ、指を止める。ミオは黙って彼を正面から見返す。
イサク「……同じ声なのに、本人は口を閉じている。……本物か、どうか、確かめる。」
レイがミオの前に立ちはだかる。ミオは彼を押しのけ、壁の黄色い消火用散水弁に気づく。レイは作業員証をポケットにねじ込む。
レイ「作業員証で通れる。俺を撃て、彼女は逃がせ!」
ミオ「勝手に決めないで!」
ミオが左手で消火用散水弁を回す。弁は加圧式の消火本管に直結しており、配管が天井ノズルへ続いて、白い水の霧が噴き出して通路が見えなくなる。
ミオの声が響いた。「この弁を回せば、水が出る!」
ミオの声が響いた。「レイ、イサクの脇、左!」
白い霧の中、イサクは顔を腕で覆ってよろめき、出口から背を向ける。二つの影がその脇の隙間を走り抜けて出口から消える。イサクは撃たず、銃を下ろす。
イサク「見えない相手は撃たない。」
霧が薄れはじめ、イサクが霧の通路へ向き直る。同時に、下ろした銃の表示面を袖でぬぐい、承認記録を開く。記録には『再審によりログ初期化/声紋を本案に再紐付け』とあり、承認音声は一年前に録音されたミオ本人の声と分かる。イサクは、録音を頼んだ人格がヨミだったのかと疑う。
イサクの声が響いた。「ミオの声だ……録音を頼んだのは、ヨミか?」