『生き埋めにされた王妃の復讐 第1話』
——王冠ごと埋められた王妃は、墓の下の竜と戻ってきた
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夫である王に先王殺しの罪を着せられ、王冠ごと生き埋めにされた王妃セレン。墓所の床下に鎖でつながれていた盲目の竜と共に脱出し、15年後、軍を率いて戻る。敵軍の元帥は、死んだと聞かされていた彼女の息子だった。母も子も、相手が誰かを知らない。
セレン王妃(主人公。生き埋めにされた王妃、灰の軍勢の首領)——オストレル王国の王妃。先王の毒殺に気づき、夫コルヴィンを告発しようとして罪を着せられた。墓所から竜と共に脱出し、焼かれた辺境の民を集めて軍にした。
コルヴィン王(敵役。父を毒殺して王位に就き、王妃に罪を着せた王)——物静かで、怒鳴らず、相手に選ばせる形で人を動かす。毒「夜咲き草」の小瓶を15年持ち続け、邪魔者は同じ方法で消す。
ケイル元帥(本名アリック)(セレンの息子。王に「ケイル」と改名され、母は逆賊だと教えられて育った王の軍の元帥)——王の養子として育ち、王を父と呼ぶ。真面目で寡黙、命令には従うが、母の形見の円盤だけは手放さない。
オズウィン(王家の墓守。王妃に蝋燭を渡した唯一の味方、現在はケイルの鎧番)——王の命令で王妃を棺に納めたが、蓋に漆喰を塗らず、蝋燭と火打ち石を渡した。王の口止めで15年黙り、ケイルのそばに仕え続けた。
真っ暗な石棺の中。震える手が火打ち石を打ち、蝋燭に火がつく。
王冠をかぶった女が石棺の中で目を見開いている。
VO:seren「私は王冠ごと埋められた。」
床の鉄格子の下で、巨大な白濁した眼が開く。
王家の墓地の地面が割れ、灰白の竜が月に向かって翼を広げる。
VO:seren「だから、もっと深くに埋められていたものを連れて戻った。」
15年後。鉄の半仮面の女が竜の首に乗って戦場を見下ろす。
[生き埋めにされた王妃の復讐]
*
オストレル王国の玉座の間。夜。
[十五年前]
先王が寝台で死んでいる。唇が緑がかった黒。王妃セレンが立ちすくむ。
死者の手の横の緑の小瓶を、王妃の手が拾う。
子ども部屋。眠る王子アリックの横に王妃が座る。
骨の円盤を二つに割り、片方を眠る子の首に結ぶ。
王妃が子に囁く。
セレン王妃「半分ずつ。もう片方を見つければ、私に会える。」
王妃が小瓶を握り、玉座へ歩く。
玉座のコルヴィン王。動じない。
小瓶を掲げる。
セレン王妃「お父上は熱病で死んだのではない。」
王がわずかに笑う。
コルヴィン王「皆はどちらを信じると思う、セレン?」
王の肩越しの王妃。
セレン王妃「評議会よ。夜明けに。」
王が二本指を上げる。柱の陰から衛兵が出て王妃を捕らえる。
王の手が、王妃の指を小瓶ごと握らせる。
コルヴィン王「しっかり持っていろ。」
王が扉に向かって叫ぶ。
コルヴィン王「王妃が父上に毒を盛った!」
扉口で凍りつく廷臣たち。
王妃が罠を悟る。
*
王家の地下墓所。床の中央に王冠の形の錠がついた巨大な鉄格子。
縛られた王妃が石棺へ運ばれる。王が続く。
墓守オズウィンが漆喰の鏝を持って目を伏せる。
王が王冠を王妃の頭に押しつける。
コルヴィン王「王冠はくれてやれ。」
王が見下ろす。
コルヴィン王「暗闇で好きなだけかぶっていろ。」
王妃が見上げて言う。
セレン王妃「殺したのは私じゃない。あなたよ。」
王が嘲るように頭を下げる。
コルヴィン王「王妃万歳。」
衛兵が重い石蓋を押していく。手前の若い衛兵(左耳が欠けている)が目をそらす。
蓋の影で、墓守が蝋燭と火打ち石を王妃の手に押し込む。
墓守が囁く。
オズウィン「漆喰は塗っていません。」
細くなる光の中で王妃が言う。
セレン王妃「息子に伝えて、私は——」
蓋が閉じる。闇。
王が階段を上がり、松明が一本ずつ消されていく。
闇の中の独白。
VO:seren「ここで死ねば、息子は母を人殺しだと信じて育つ。」
王冠がかすかに光る。
VO:seren「そして本当の人殺しが、あの子を育てる。」
*
蝋燭に火がつき、王妃の顔が浮かぶ。
肩で蓋を押す。わずかに動く。
蓋が床に落ちる。
王妃が棺から出る。
階段上の鉄扉は外から鎖で閉ざされている。
広大な闇に小さな灯。
壁の浮き彫り。王たちが首輪で竜を地下につないでいる。
VO:seren「始祖の王たちは、ここに何かをつないだ。」
浮き彫りの細部。冠をいただく王が血の掌を王冠形の錠に押し当てている。
鉄格子の上に跪く。下から温かい風。
下から巨大な吐息。王妃が息を止める。
格子の下を白い鱗が滑っていく。
白濁した眼に蝋燭の灯が映る。
後ずさり、錠と浮き彫りを見比べる。
*
王冠を外し、七つの先端を見つめる。
王冠の先で掌を切る。
血の手を上げて言う。
セレン王妃「暗闇でかぶれと言ったわね。」
血の掌を錠に押し当てる。錠の継ぎ目が橙に光る。
鉄格子の床が持ち上がり、灰が噴き上がる。
竜の頭が格子を破って現れる。
王妃が凍りつく。背後に竜の鼻先。
竜の白い眼に王妃が映る。
血の掌を差し出す。竜が触れ、首を垂れる。
首輪の鎖をつかんで首に乗る。
竜が天井を突き破る。
空の石棺が落石で砕ける。
フックと同じ画。墓地が割れて竜が飛び立つ。
竜の首の上の王妃。
月夜の都と宮殿の上を、灰を引いて竜が飛ぶ。
城壁の衛兵が見上げて固まる。
宮殿の中庭に灰が雪のように降る。
*
露台の王。肩に灰が積もる。
杯のワインに灰が落ちる。
衛兵長が跪いて報告する。
OS:guard「墓所が開いております。遺体はありません。」
王が言う。
コルヴィン王「ならば、あの怪物と一緒に焼け死んだ。」
戸口に裸足の王子。胸に半分の円盤。
王が膝をついて優しく言う。
コルヴィン王「母上は、お祖父様に毒を盛ったのだ。」
王子の涙。
王が振り返らずに命じる。
コルヴィン王「王子も死んだと国中に触れ回れ。」
王の手が子の頭に置かれる。
VO:corvin「今夜からお前はケイルだ。アリックは死んだ。」
戸口の陰で墓守が聞いている。
*
焼けた辺境。夕焼けの空を竜が渡る。
VO:seren「王は国中に、私の息子は死んだと告げた。」
村の広場で触れ役が鐘を鳴らす。群衆に頭巾の王妃。
OS:herald「逆賊の王妃が王子に毒を盛った!」
涙。それから顎に力がこもる。
頭巾を下ろして誓う。
セレン王妃「なら、あの男のすべてを奪う。」
尾根の焚き火。竜が王妃を囲んで丸くなる。
VO:seren「だから、あの男に焼かれた者たちを集めた。」
亡命者たちと剣の稽古。
夜、竜の首にまたがり焼けた砦の上を低く飛ぶ。
竜が砦の門を引きはがし、囚人たちが逃げ出す。
亡命者たちが跪く。
鍛冶の槌が鉄の半仮面を打つ。
15年後。白い一房の髪。鉄の半仮面をつける。
黒い尾根に広がる灰の軍勢の野営。岩の上に竜。
玉座の間。若い騎士が王の前に跪く。
王が剣を柄から渡す。
王が言う。
コルヴィン王「お前の母は私の父に毒を盛った。忘れるな。」
同じ構図で大人になった顔。首に半分の円盤。
ケイル元帥(本名アリック)「忘れたことはありません。」
*
グレイフィールドの平原。王の軍の野営。
[現在]
若き元帥ケイルが天幕に入る。
地図卓に座る王。
王が白い駒を川の向こうに置く。
コルヴィン王「あの女の獣が川で目撃された。」
ケイルが答える。
ケイル元帥(本名アリック)「では明日、戦います。」
天幕の口から対岸の尾根の焚き火を見る。
首の半分の円盤を指で回す癖。
王の視線が円盤に落ちる。
コルヴィン王「まだ逆賊の飾りを着けているのか。」
ケイルが円盤を握る。
ケイル元帥(本名アリック)「母のものは、これしかありません。」
天幕の隅で鎧を磨く老オズウィンの手が止まる。
王が冷たく言う。
コルヴィン王「ならば魔女と一緒に燃やせ。」
黙って円盤を鎧の下に隠し、背を向ける。
天幕の外。ケイルが老人に尋ねる。
ケイル元帥(本名アリック)「あなたは母を知っていた。どんな人だった?」
老人が目をそらして答える。
オズウィン「勇敢でした。私よりずっと。」
*
対岸の尾根を、竜が低く飛ぶ。
老人が見上げて固まる。桶が落ちる。
望遠。竜の首の、壊れた鉄の首輪。
老人が気づく。
オズウィン「墓所の下にいたものだ。」
「生きていた」
オズウィン「生きておられた。」
老人が元帥の天幕へ急ぐ。
王が影から出て老人の行く手をふさぐ。
王が軽く言う。
コルヴィン王「亡霊でも見たような顔だな。」
老人がごまかす。
オズウィン「灰を見ただけです、陛下。」
王がワインを注ぐ。杯の陰で、あの緑の小瓶を傾ける。
王が杯を渡す。
コルヴィン王「飲め。昔のよしみだ。」
杯の表面が震える。
老人が王を見たまま飲み干す。
*
夜。老人が天幕に倒れ込み、ケイルが受け止める。
唇が緑がかった黒。先王と同じ。
老人があえぐ。
オズウィン「お母上は……王冠を……」
ケイルが首を振る。
ケイル元帥(本名アリック)「母は死んだ。」
老人の手が円盤をつかみ、力が抜ける。
オズウィン「彼女は——」
悲しみが怒りに変わる。
王が戸口に立つ。
コルヴィン王「夜咲き草だ。あの女の毒だ。」
王があおる。
コルヴィン王「我らを滅ぼしに戻ってきたのだ。」
目を閉じさせて立ち上がる。
ケイル元帥(本名アリック)「ならば、私が終わらせる。」
天幕の外に兵が集まる。
*
夜明け。灰色の平原に両軍。
尾根の王妃。あの鉄の王冠をかぶる。
王妃が言う。
セレン王妃「私は王冠ごと埋められた。」
セレン王妃「今日は、かぶって行く。」
剣の柄に、円盤のもう半分が結ばれている。
ケイルが面頬を下ろす。
騎兵が突撃を始める。
泥を蹴る蹄。
ケイルが叫ぶ。
ケイル元帥(本名アリック)「王のために!」
空撮。数千騎が平原を駆ける。
王妃が手を上げ、拳を握る。
竜が岩から飛び立つ。
竜が低く飛び、灰の息を吐く。突撃の先頭が止まる。
灰の中で兵がむせ、馬が回る。
ケイルが灰の壁の前で止まる。
面頬の奥の目。
灰の軍勢が盾を構える。
*
静まり返った平原。突撃は灰の中で止まっている。
灰の中から王妃が一人で、止まった王の軍の前列へ歩み出る。
前列の白髪の兵。左耳が欠けている。王冠を見て顔色が変わる。
兵が槍を落とし、灰の中に膝をつく。
前列の兵が次々に膝をつく。
OS:soldiers「王妃だ……俺たちが埋めた王妃だ」
仮面の外の頬を、涙が灰を割って落ちる。
王妃が兵に言う。
セレン王妃「立ちなさい。あなたは石を押しただけ。」
丘の上の王。笑みが消えていく。
王が名を呟く。手綱の手が震える。
コルヴィン王「セレン。」
王妃が剣先を丘の王へ向ける。
盲目の竜が熱を追い、丘の王へ首を向ける。
灰の軍勢が叫ぶ。膝をついた王の兵が顔を上げる。
OS:host「王妃万歳!」
膝をつく兵の間を、ケイルが一騎で抜けて馬を降りる。
王妃が問う。
セレン王妃「王の軍を率いるのは誰?」
ケイルが面頬越しに答える。
ケイル元帥(本名アリック)「王の息子だ。」
セレン王妃「なら、父親の罪を背負って死になさい。」
ケイル元帥(本名アリック)「お前は、母の仇として死ね。」
剣の柄の半分と、喉当ての下の半分。ピントが送られる。
母と子が剣を抜いて灰の中で向かい合う。その上で竜が翼を広げる。
[第2章 灰の中の対面]
*
王妃は王冠ごと生き埋めにされ、墓の下には竜がいた。
先王は王妃が来る前にすでに毒で死んでいた(王妃は犯人ではない)。
王が自分の父を殺し、王妃に罪を着せた。
始祖の王たちが墓所の下に竜をつなぎ、封印は冠をいただく者の血で開く。
王子アリックは生きていて「ケイル」と改名される。国には王子も死んだと告げる。
セレンは「王子は死んだ」という布告を信じる。
オズウィンが竜の首輪で、灰の女王=生きていた王妃だと気づく。
王はあの緑の小瓶をまだ持ち、同じ毒でオズウィンを殺す。
王妃を埋めた兵が膝をつき、王は王妃が生きていたと知る(第1話の決着)。
向かい合う二人がそれぞれ円盤の半分を持っている(母と子)。
竜の名と、なぜ王家が竜をつないだのか/セレンの火傷の理由。
【次章への問い】セレンは、もう片方の円盤に気づく前に、自分の息子を殺してしまうのか。