『MY IDOL HATES ME』第7話「笑顔の値段』
——晴(広報担当)
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笑顔を作ろうとする蓮の口角が途中で止まる。晴の指が画面外から椅子の背を軽く叩く。/椅子を叩く乾いた一音。BGMなし。
晴「笑え。」
蓮はレンズを見ず、晴の目を捉える。晴は画面の再生を止めてから答える。/動画停止の小さいタップ音。部屋の換気音を残す。
蓮「俺の声、切ったのは?」
晴「俺だ。守るつもりだった。」
波形には離れた二箇所の切断点。晴は画面を伏せようとし、蓮の視線で手を止める。/加工音声は再生しない。端末ケースが机に触れる音だけ。
蓮「『消えていい』だけ抜いて、何を守った?」
晴「お前が謝れば、今夜は出られる。」
晴は紙をレンズ横へ持ち上げる。蓮は受け取らず、椅子から立つ。/紙が震える音。立つ際の衣装の擦れ。
晴「読んで。『全部、僕が悪かった』。」
蓮「してないことに、謝れない。」
海は蓮に触れず、黒い手袋の掌を晴に向けて止める。奥のユウは笑顔のまま爪先を揺らしている。晴がその不自然な笑顔に気づく。/爪先の微かな床音。音楽で感情を誘導しない。
海「その紙を、蓮に渡すな。」
晴「俺は、何を守ってたんだろう。」
晴が謝罪文を裏返し、スマートフォンのカメラを閉じる。蓮は出口へ逃げず、自分で椅子の向きを変えて晴に向き合う。/端末ロック音。紙を置く音。
晴「撮らない。まず、俺が話す。」
蓮「聞く。でも、俺の代わりに決めるな。」
晴は端末を伏せ、両手を見える位置に置く。蓮は目を伏せず、返事の後に一歩距離を取る。/換気音を少し落とし、肉声を近くする。
晴「声を切って、脅しにした。ごめん。」
蓮「許すかは、俺が決める。」
伊織が人差し指を口元から離し、卓上マイクを指す。晴は伏せたスマートフォンと点灯中のマイクを見比べる。/小さな通話回線のノイズが初めて聞こえる。
伊織「カメラじゃない。マイクが生きてる。」
晴「俺の操作じゃ、切れない。」
律が伊織と視線を交わす。伊織が端子を指示し、律が収音側だけを物理的に抜く。赤が消える。別系統の緑の通話ランプは点灯したまま。晴は言い訳せず蓮の前から半歩下がる。/端子を抜くカチリという音。その後、一秒の静寂。
スピーカーから声。晴が消えたマイクを見て、すでに遅かったと理解する。蓮は晴から目を離さない。/都の声はこの回線から乾いた質感で。言葉の後に短い回線切断音。
都「その告白も、録れた。」