『お母さんにも、定休日』
——娘・結衣と、母・由香
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無言の先行hook:母が鞄を肩に掛けたまま、エプロンに手をかけて立ち止まる。(冒頭では発話しない)。
母がエプロンを外して机へ置く。
由香「今日は家事をお休み。お母さんも出かけたいの。」
成人した娘が冷蔵庫へ目を向ける。
結衣「ご飯、作ってくれると思ってた。」
母が鞄の肩紐に手を添えて、娘を見る。
由香「二十五歳なら、自分で作れるでしょう。」
娘が椅子から立つ。
結衣「昨日は、放っておいてって言ったけど。」
母が二つのカップを並べる。
由香「じゃあ今日は、私も自分の時間にするね。」
娘が鞄の持ち手を見つめる。
結衣「私が放っておいてって言ったから、怒ってる?」
母が画材箱の入った鞄をいったん机に置き、娘に穏やかに話す。
由香「怒ってないよ。たまには私も休みたいだけ。」
娘が母の顔を見て行き先を尋ねる。母は机の鞄を取り、肩に掛け直す。画材箱は鞄の中に入ったまま。
結衣「そっか。今日はどこに行くの?」
母が鞄から小さな画材箱を見せる。
由香「昔の友達と、好きな絵を描きに。」
娘がエプロンを手に取り、二つのカップに水を注いで、片方を母に手渡す。
結衣「じゃあ家事は私が。絵が好きなんて知らなかった。」
母が画材箱を鞄へ戻す。
由香「ずっと好きだったの。お母さんになる前からね。」
娘はエプロンを手に持ったまま、母を見送る。母は鞄を肩に掛け、画材箱は鞄の中、カップは机に置いて、戸口に立つ。
結衣「お母さん、いや、由香さん。明日お茶しながら絵を見せて。約束。」
母が戸口で振り返り、鞄の中の画材箱に軽く手を添えて、小さく微笑んで出ていく。娘はエプロンを手に台所に残り、机には二つのカップが並んでいる。