【公式映像脚本】『毎晩の隣の物音、隣人の嘘』
■ あらすじ
壁の薄いアパートに住む由紀は、毎晩隣から聞こえる物音に怯えている。由紀が壁を叩くと隣人の真央が叩き返し、音は止まる。『私も聞こえてる』と言う真央を、由紀は親切な人だと思っていた。ある夜、由紀が理由を尋ねると、真央は隣の部屋の予備の鍵を見せ、由紀の部屋で話そうと誘う。そこで真央は、音は自分の部屋から出ていたと明かす。さらに、自分で音を止めて叩き返し、第三者のふりをして疑いを避けていたと笑う。真央が帰った後、由紀は毎晩の安心が自分をだますための嘘だったと悟り、壁を見つめて震える。
■ 登場人物
・萩原 由紀(壁の薄いアパートに住む会社員。物音に毎晩怯えている。)
・沢渡 真央(由紀の隣の部屋に住む親切な隣人。)
■ 本編カット割り台本
【シーン 1】
◆ s01(5秒)
テロップ:[壁の向こうで、何が?]
萩原 由紀「何の音!? 真央さん、返事して…。」
【シーン 2】
◆ s02(5秒)
ト書き:二人の胸から上を捉える固定構図。左端に由紀の自室の戸枠を入れ、冒頭、由紀の肩と胴体が戸枠を越えて廊下側へ出るのを見せる。由紀は左、真央は右で向き合う。由紀のベージュのカーディガンは胸元まで閉じ、下の白いシャツは見えない。二人の手と前腕は下端より外に置き、壁を叩く動作は音で示す。背後はベージュの壁、番号付きの戸口、天井灯。自室の内部は映さない。画面右端は真央の肩より外の壁で閉じ、端から手が入る構図にしない。
テロップ:[由紀が自室を出て廊下へ・夜]
テロップ:[萩原 由紀・壁の薄いアパートに住む会社員]
沢渡 真央「大丈夫、私も聞こえてる」
萩原 由紀「隣人の真央さん、ありがとう」
【シーン 3】
◆ s03(5秒)
ト書き:部屋の奥行きを見せる固定の広めの構図。手前にローテーブル、その上に小さな鉢植えと暖色のランプ。床のクッションと、遮光カーテンを閉じた窓が入り、由紀は奥の薄い壁の前に立つ。由紀のベージュのカーディガンは胸元まで閉じ、下の白いシャツは見えない。この着方を全カットで共通にする。廊下や出入りの動作は映さない。
テロップ:[由紀の部屋へ戻って・夜]
萩原 由紀「今夜も返事が来た。」
◆ s04(5秒)
ト書き:由紀の顔だけの寄り。画面下端は顎のすぐ下とし、襟元や胸元を映さない。立ち上がる顔を短い上方向の追従で捉え、由紀が自分のドアの方へ顔を向ける。背景には薄い壁と、ぼけたローテーブルの端が残る。
萩原 由紀「今夜こそ、真央さんに聞いてみよう。あの音のことを」
【シーン 4】
◆ s05(7.5秒)
ト書き:廊下の固定ミディアム二人画。左の由紀と右の真央の顔、肩、手元が見える。由紀のベージュのカーディガンは胸元まで閉じている。真央は自分の胴体の前で、キーリングの付いた銀の鍵を右手の指でつかんで見せる。手首から灰色の袖、肩までのつながりを画面内に収める。由紀の両手は自分の腰元に置く。背景はベージュの壁と閉じたドア、天井灯。
テロップ:[アパートの廊下・夜]
萩原 由紀「あの音は?」
沢渡 真央「隣の私の部屋の予備の鍵。話は由紀さんの部屋で。」
【シーン 5】
◆ s06(5秒)
テロップ:[二人は由紀の部屋へ・夜]
萩原 由紀「毎晩の音が怖くて」
沢渡 真央「気にしないで。毎晩の物音、どこから聞こえる?」
◆ s07(5秒)
萩原 由紀「あの音はどこから?」
◆ s08(6.5秒)
ト書き:真央の背後から由紀を見る固定の肩越し構図。左に由紀の顔、右手前に真央の茶色いボブの後頭部と灰色の肩。真央の顔は見せず、由紀の顔だけを明瞭に捉える。真央は右手で銀の鍵を直接つかみ、肩より低い位置で由紀に示す。手から灰色の袖へ続く腕を画面内に収める。由紀の目が見開かれ、そのまま固まる。由紀のカーディガンは胸元まで閉じている。背景は薄い壁とローテーブル、暖色のランプ。窓は画角に入れない。
沢渡 真央「この鍵は、壁の向こうの部屋のもの。あの音は私の部屋よ」
萩原 由紀「え…真央さんの部屋?」
◆ s09(10.5秒)
ト書き:固定のタイトな二人の顔のクローズアップ。左に由紀、右に真央を置き、二人の目と口を明瞭に見せる。下端は顎のすぐ下で、胸元、手、鍵、脚は画角外。由紀の低い位置のポニーテールと真央の短い茶色のボブは維持する。真央は画角外の片手に鍵を持ったまま、もう片方の手を壁に添えている。真央の穏やかな笑顔と、由紀が嘘を悟って目と唇を震わせる表情を同じ画面で対比する。背景はぼけた薄い壁とローテーブルの端。最後まで引きの画にしない。
沢渡 真央「私が音を止めて、叩き返してたの。『私も聞こえる』って嘘なら、疑われないでしょ?」
◆ s10(4秒)
ト書き:由紀の目元から顎までを捉える極端な寄り。上端を眉のすぐ上に置き、前髪や頭頂部、襟元、手は映さない。画面外で真央が退出し、ドアが閉まる音。由紀は壁から目を離さず、頬と唇を震わせる。最後まで安心させる音はない。
萩原 由紀(声)「私をだますために、毎晩…。」