『引っ越した部屋のポストに、十年前の恋文が届く』
——古いアパートの201号室に越してきた彩花。ポストに届いたのは、十年前の日付の手紙だった。返事を書くと、翌朝また返事が来る。相手は十年前の201号室の住人・セイ。彼はクリスマスイブの夜、火事で死ぬはずだった。
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古いアパートの201号室に越してきた彩花。ポストに届いたのは、十年前の日付の手紙だった。返事を書くと、翌朝また返事が来る。相手は十年前の201号室の住人・セイ。彼はクリスマスイブの夜、火事で死ぬはずだった。
森 彩花(lead / 201号室に越してきた図書館司書)。
七瀬 誠(セイ)(lead / アパートの大家。十年前の201号室の住人)。
郵便受けを開けた彩花が、古い封筒を見て固まる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『引っ越した部屋のポストに——』。
封筒の消印。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『十年前の日付』。
題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『引っ越した部屋のポストに、十年前の恋文が届く』。
201号室。机で手紙を読む彩花。
七瀬 誠(セイ)は胸の奥で呟いた。——201号室の、新しい住人さんへ。十年後のあなたに、届くでしょうか。
*
彩花が返事を書く。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——冗談のつもりで、返事を書いた。翌朝、また返事が来た。
階段の下。大家の七瀬が、自分のマフラーを彩花の首に巻く。一瞬、顔が近づく。
七瀬 誠(セイ)「201は、冷えますから。」
大家の左手の甲の、古い火傷の跡。
手紙は一か月続く。彩花が手紙の束を抱きしめる。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——十年前のセイさんに、私は恋をしていた。
*
その瞬間、空気が凍りついた。古い新聞の切り抜き。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『十年前のクリスマスイブ アパート201号室で火災 住人の男性が死亡』。
その瞬間、空気が凍りついた。彩花の顔から血の気が引く。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——セイさんは、クリスマスイブの夜に死ぬ。
彩花が泣きながら手紙を書く。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——イブの夜は、部屋にいないで。お願い。
*
十二月二十五日の朝。空の郵便受けを何度も見る彩花。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『12月25日』。
森 彩花「……嘘。なんで、来ないの?」
彩花が郵便受けに額をつける。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——それきり、手紙は来ない。間に合わなかった? 死なないで……!
夕方。階段の下で大家が古い封筒を差し出す。
七瀬 誠(セイ)「これ、十年前に、あなた宛てに預かった手紙です。」
*
封筒を持つ大家の左手。火傷の跡。
彩花が火傷の跡と大家の顔を見比べる。
森 彩花「……セイ、さん?」
大家が照れたように笑う。
七瀬 誠(セイ)「あなたの手紙で、クリスマスイブの夜は外にいた。それから十年、待ってた。」
セイがコートの前を開け、彩花をその中に抱き寄せる。柵のクリスマスの電飾がまたたく。
森 彩花は胸の奥で呟いた。——十年分の手紙より、この腕のほうが温かい。
その瞬間、空気が凍りついた。彩花が大家の手を両手で包み、つま先立ちでそっとキスする。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『大家さんは、十年前の文通相手だった。』。
七瀬 誠(セイ)は胸の奥で呟いた。——はじめまして。十年ぶりです。
日常のわずかな綻びから始まった『引っ越した部屋のポストに、十年前の恋文が届く』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。