『離婚届を出しに行ったら、夫は二年前に死んでいると言われた』
——二年間、指一本触れてこない夫と別れるため、真希は役所の窓口に離婚届を出した。返ってきたのは「ご主人は二年前に亡くなっています」。では毎晩、隣の部屋で眠るあの人は誰なのか。
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二年間、指一本触れてこない夫と別れるため、真希は役所の窓口に離婚届を出した。返ってきたのは「ご主人は二年前に亡くなっています」。では毎晩、隣の部屋で眠るあの人は誰なのか。
早瀬 真希(lead / 夫と別れようとしている)。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)(lead / 真希の夫として暮らしてきた男。本当は夫・慧の双子の弟)。
窓口の職員(support / 役所の窓口の職員)。
役所の窓口。離婚届を差し出したまま、真希が凍りつく。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『離婚届を出しに行ったら——』。
職員が画面を見て、言いにくそうに顔を上げる。
窓口の職員「ご主人は、二年前に亡くなっています。」
題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『離婚届を出しに行ったら、夫は二年前に死んでいると言われた』。
白い紙の上で震える真希の手。
早瀬 真希は胸の奥で呟いた。——二年前の事故のあと、夫は、私に触れなくなった。
*
回想。台所に立つ夫の背中。優しく料理をしている。
早瀬 真希は胸の奥で呟いた。——優しいのに、寝室は別。指一本、触れてこない。
食卓で、真希が夫の背中を見つめる。
早瀬 真希は胸の奥で呟いた。——だから、別れようと決めた。
回想。夜の台所。真希が背伸びして夫にキスしようとする。唇が触れる寸前、夫はそっと肩を押して顔をそむける。
早瀬 真希「……今夜も、別の部屋で寝るの?」
*
夜。帰宅した真希が、書類を食卓に叩きつける。
早瀬 真希「あなた、誰なの。」
食卓の書類。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『死亡 早瀬 慧 二年前』。
その瞬間、空気が凍りついた。夫が目を伏せ、告白する。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「……慧の、双子の弟です。涼といいます。」
その瞬間、空気が凍りついた。涼が、兄の最期を話す。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「兄は事故で死んだ。最後に「妻を頼む」って。」
真希の目から涙。
早瀬 真希「二年も、私をだましてたの?」
涼が静かに答える。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「触れなかったのは、君が兄の妻だからだ。」
涼が真希の頬に手を伸ばし、触れる寸前で止める。額と額が近づき、目を閉じる。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「一度でも触れたら、もう兄のふりはできなかった。」
*
翌日の夕方。涼が小さな鞄を持って玄関に立つ。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「18時の電車で、町を出る。もう、君を縛らない。」
真希が銀杏の落ち葉の舞う秋の夕暮れの道を走る。18時まであと7分。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『18時まで あと7分』。
誰もいないホームに涼が一人。落ち葉が足もとを転がっていく。
息を切らした真希が、紙を差し出す。
早瀬 真希「待って!」
*
真希の手の書類。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『婚姻届 夫になる人 早瀬 涼』。
涼が目を見開く。
早瀬 涼(夫・慧の双子の弟)「これ……離婚届じゃ——」
真希が泣きながら笑う。
早瀬 真希「二年間、私に恋をさせたのは、慧じゃない。あなたよ。」
その瞬間、空気が凍りついた。背後を電車が通り過ぎる。真希が涼の襟を引き寄せ、激しくキスする。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『夫だった人の、本当の名前を書いた。』。
早瀬 真希は胸の奥で呟いた。——今度は、本当の名前で結婚して。
日常のわずかな綻びから始まった『離婚届を出しに行ったら、夫は二年前に死んでいると言われた』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。