『彼の部屋の開かずの扉を開けたら、五年後の私がいた』
——同棲中の彼の部屋に一つだけある開かずの扉。ハロウィンの夜、七海が鍵を開けると、中にいたのは五年後の自分だった。「その人と結婚しないで。五年後、彼は私をかばって死ぬ」。
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同棲中の彼の部屋に一つだけある開かずの扉。ハロウィンの夜、七海が鍵を開けると、中にいたのは五年後の自分だった。「その人と結婚しないで。五年後、彼は私をかばって死ぬ」。
岡部 七海(lead / 恋人の部屋で同棲している)。
岡部 七海(五年後)(lead / 五年後の七海)。
有馬 駿(lead / 七海の恋人)。
ハロウィンの夜。白い扉が開く。青い光の中を見た七海が凍りつく。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『彼の部屋の、開かずの扉の向こうに——』。
椅子に座った、髪の短い「七海」が顔を上げる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『五年後の私がいた。』。
岡部 七海(五年後)「……待ってた。」
題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『彼の部屋の開かずの扉を開けたら、五年後の私がいた』。
*
一か月前。居間のソファで、毛布にくるまって笑いながらキスする二人。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『一か月前』。
岡部 七海は胸の奥で呟いた。——同棲して一年。彼の部屋には、開かずの扉が一つある。
駿が後ろから七海を抱きすくめ、耳もとでささやく。笑っているのに、目は笑っていない。
有馬 駿「あそこは、開けちゃだめな部屋なんだ。」
ハロウィンの夜。かぼちゃのランタンの横に、小さな鍵。
岡部 七海は胸の奥で呟いた。——ハロウィンの夜、その鍵を見つけた。
*
五年後の七海が、静かに告げる。
岡部 七海(五年後)「その人と、結婚しないで。」
その瞬間、空気が凍りついた。涙がひとすじ。
岡部 七海(五年後)「五年後、彼は私をかばって死ぬ。」
その瞬間、空気が凍りついた。七海が後ずさる。
岡部 七海「嘘……」
*
翌日の夜。テーブルに置かれた指輪の箱。
有馬 駿は胸の奥で呟いた。——結婚してください。
七海が泣きながら首を振る。
岡部 七海「ごめん。……あなたに、生きててほしいの。」
駿が何も言えずに、箱を閉じる。
有馬 駿「……わかった。」
翌朝。乱れたシーツ。駿のシャツを羽織った七海が、眠る駿の額にキスして、そっとベッドを出る。
岡部 七海は胸の奥で呟いた。——最後の夜だけ、わがままを言った。
七海がスーツケースを引いて、部屋を出ていく。
岡部 七海は胸の奥で呟いた。——私は、彼と別れた。
玄関に残された駿が、閉じた扉に向かって小さく言う。
有馬 駿「七海……元気で。」
*
五年後。髪の短くなった七海が、空き部屋になった同じ廊下に立つ。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『五年後』。
七海の独白。
岡部 七海(五年後)は胸の奥で呟いた。——プロポーズを断って五年。彼は生きている。でも私は、死んでいるのと同じだった。
七海が扉の部屋に入り、椅子に座る。
扉が開き、若い七海が覗く。
若い七海が、震える声で聞く。
岡部 七海「……彼、死ぬんでしょ?」
その瞬間、空気が凍りついた。五年後の七海が、泣きながら微笑む。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『五年後の私は、逆のことを言った。』。
岡部 七海(五年後)「それでも……結婚して。」
日常のわずかな綻びから始まった『彼の部屋の開かずの扉を開けたら、五年後の私がいた』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。