『毎晩の夕食、私は食べていない』
────────────────────────
夜の食卓で、洋子が夫の修に、自分だけ夕食を食べられないと訴える。修は手を止め、一人分の夕食を食卓に置く。洋子が目の前の夕食を食べられない理由を尋ねると、修は「亡くなった君に、ごはんをあげてるんだ。」と答える。洋子は食器棚にある自分の遺影と、鏡に映らない自分に気づく。修は線香を立て、洋子が亡くなって一年になり、体のない幽霊だから食べられないと告げる。洋子の姿は消えるが、直後に修の耳元で「消えても、ここにいるわ。」と声がする。修は恐怖で動けず、誰も見えない隣を見つめる。
秋野 洋子「私だけ、食べられない。」
秋野 修「これは、夫の俺から洋子への夕食だよ」
秋野 洋子の声が響いた。「毎晩、私の夕食を置くのね」
秋野 洋子「目の前にあるのに、どうして食べられないの?」
秋野 修の声が響いた。「亡くなった君に、ごはんをあげてるんだ。」
秋野 洋子「これ、私の写真?」
秋野 修の声が響いた。「遺影だよ。亡くなった君を忘れないための写真だ。」
秋野 修「亡くなった君にも食べてほしくて、毎晩置くんだ。」
秋野 修「亡くなった君のために、線香をあげるんだ。」
秋野 洋子の声が響いた。「修は映るのに、私の顔も手も映らない。」
秋野 修「亡くなって1年。体のない幽霊だから、ごはんを口に入れられないんだ。」
秋野 洋子の声が響いた。「消えても、ここにいるわ。」