『結婚相談所で紹介された相手は、私の夫だった』
——会話のなくなった結婚七年目。クリスマスまでにもう一度ときめきたくて、玲はこっそり結婚相談所に登録した。お見合いの席に現れたのは、夫・直樹。しかも夫は、三か月も前から登録していた。
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会話のなくなった結婚七年目。クリスマスまでにもう一度ときめきたくて、玲はこっそり結婚相談所に登録した。お見合いの席に現れたのは、夫・直樹。しかも夫は、三か月も前から登録していた。
高原 玲(lead / 結婚七年目の妻)。
高原 直樹(lead / 玲の夫。無口な設計士)。
神崎(support / 結婚相談所の担当者)。
ラウンジ。笑顔で顔を上げた玲が、そのまま固まる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『結婚相談所で紹介された相手は——』。
花束を持った直樹が立ち尽くす。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『私の夫だった。』。
高原 直樹「……玲?」
題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『結婚相談所で紹介された相手は、私の夫だった』。
*
一週間前。夜の食卓で一人で食べる玲。向かいの皿は空。寂しさに慣れてしまった顔。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『一週間前』。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——結婚七年目。夫婦あるある。最後に話したのが、いつか思い出せない。
玲がスマホを見つめる (画面は見せない)。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——クリスマスまでに、もう一度ときめきたくて。こっそり結婚相談所に登録した。
ラウンジ。直樹が玲の唇のコーヒーを親指でぬぐい、顔が近づいて二人とも固まる。
高原 玲「はじめまして……じゃ、ないわよね。」
*
その瞬間、空気が凍りついた。相談所の個室。担当の神崎が書類をめくる。
神崎「ご主人は、三か月前からご登録です。」
その瞬間、空気が凍りついた。玲の顔がこわばる。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——私より、ずっと先に。
玲が笑ってみせるが、声が震える。
高原 玲「先に別れたかったのは、あの人の方だったのね。」
*
神崎が規則を告げる。
神崎「ご夫婦で別々に登録、実はあるあるです。お見合いのお返事は、今夜9時までに。」
夜の食卓。8時50分。玲が断りの返事を打ちかけて止まる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『21時まで あと10分』。
高原 玲「……どうして、今さら?」
玲が唇をかむ。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——断られる前に、私から断る。もう、泣かない。
食卓に置かれた封筒。神崎からの、夫のプロフィール。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——担当さんが渡してくれた、夫のプロフィール。
*
玲が読む、理想の相手の欄。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『理想の相手:妻。できれば、七年前の妻と、もう一度。』。
玲が口を押さえて笑い泣きする。
高原 玲は胸の奥で呟いた。——夫は、私ともう一度始めるために登録していた。
21時ちょうど。玄関のチャイム。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『21:00』。
玄関の扉が開き、花束を持った直樹が立っている。
高原 直樹「返事、聞きに来た。」
直樹が玲を玄関の壁に追い詰め、壁に手をつく。七年ぶりの近さ。
高原 直樹「七年分、口説きに来た。断るなよ。」
玲が自分のスマホを差し出す。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『理想の相手:夫。』。
高原 玲「……私の、理想の相手の欄も見る?」
その瞬間、空気が凍りついた。玄関。花束をつぶしながら、七年ぶりのキス。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『理想の相手の欄に、お互いの名前があった。』。
高原 直樹は胸の奥で呟いた。——……好きだ。交際、お願いします。
日常のわずかな綻びから始まった『結婚相談所で紹介された相手は、私の夫だった』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。