作成時間: 2020-07-27 07:14:37

更新時間: 2020-08-27 07:55:21

作者: otspace0715

タイトル

ブロービニア

ジャンル

ファンタジー ハイファンタジー

タイトルキーワード

バランス 陰陽 伝説 石 天秤 星座 精霊 星 助ける 鉱物

あらすじキーワード

惑星リブラ 生命(いのち)の羽衣 精霊の絹糸 精霊の石 宇宙 伝説 人工知能(AI) 魔女喰い ヴァンパイア 鉱物

あらすじ

バランスの物語 光(神)ある所に、影(人)あり 力がある所に力は集中し、多大なる力はやがて大きな災難を引き起こす 望まれぬ仕事を押し付けられる精霊カーストと自由に生きる精霊と自然との調和 デジタルとアナログのバランス 自然(精霊や神々の力)と人との調和 絶対善(殺さず、従わさず、惑わさず)を望みながら翻弄される神々の物語 宇宙は数学である 精霊が見えていた世界から遠く離れた未来・もしくは別の宇宙で 人々は石と共に生まれて、その石と運命を共にする 運命の石は磨かれて宝石となり、精霊がリプログラムされている そのリプログラムが人の運命となる 運命の石に刻まれた精霊の死がそのまま人の死に繋がっている

本文

「ううっ、また、なんか変な感じがする......」
俺は今、森の中にある廃屋の中心に座り込んでいた。
「お、おい!大丈夫かよ!しっかりしてくれ!」
廃屋の入り口から、人の声が聞こえた。その声は野太く、聞き覚えがあるような、そんな気がした。

「誰だ......」
そう言って、顔を上げてみるも、誰も居ない。誰かがいる......そんな気がしただけなのだろうか。

「何だ、誰もいないな......あ、おい!おい!うおおっ!誰か、誰か......!」
しかし、誰もいない。何が、あった。俺は、何だか急に不安になってきた。

「おい!誰か!誰か居ないのかよ!?」
そう言って、俺は自分の身体を揺すった。そんな俺の背中を、誰かがゆっくりと押していく。
俺は、誰かに押し倒され、そのまま後ろに倒れこんだ。

「うえっ!何、何だ!?」
突然、視界が暗転し、頭が痛く、くらくらした。

「痛えー......何、これ?」
俺は、ゆっくりと起き上がって、周囲を見渡した。すると、廃屋と廃屋の周囲に、白い石の塊が転がっていた。

「おいおい、何だよ、これ!」
俺は、そう言って、その場にしゃがみこんだ。白い石......何だろう、すごく綺麗だけど......そう思ったら、急に涙が出てきた。

「おい!どうしたんだよ!?何だよ、これ!?」
俺は、そう叫びながら、両手で顔を覆い、うずくまる。涙が、ポタリ......ポタリ......ポタリ......。
涙が、ポタポタと垂れてきた。

「うおおおっ!おい、どうしたんだ!?」
突然、誰かに俺の肩を揺さぶられて、俺はハッとなって顔を上げた。

「......大丈夫?大丈夫?」
俺は、その声に首を横に振った。

「大丈夫?大丈夫?」
......だめだ。全然、頭が回らない。

「......大丈夫?」
また、誰かわからない女の人に声をかけられた。

「おい!どうしたんだよ!?大丈夫!?しっかりしろ!?」
俺は、そこで、ハッとした。そうか。俺は、頭をぶつけたんだ。そうだ。俺は、気を失っていたんだ。
俺は、慌てて起き上がると、自分の体をあちこち確認した。

「あっ!大丈夫だって!」
俺は、そう言って、その女の人に笑顔を向けた。

「よかったぁ。怪我とかしてない?」
俺が見ると、女の人は、ニコリと笑って、頭を撫でた。

「はぁ......。もう......」
俺は、そんな女の人に、頭を撫でられながら、

「あの......」
と言った。

「なに?何か、あったの?」
「あっ、おでこに、何か、怪我とかしてない?大丈夫?」
女の人は、少し困ったような顔をした。

「いやぁ......」

「もしかして、怪我してんの?」
そう女の人が俺のおでこに手を当てると、

「あっ!あっ!」
俺のおでこが、ズキンと痛んだ。

「痛い?」
痛みで、涙が出た。

「えっと......たぶん」
俺は、自分が何をしたのかも、何があったのかも、わからなかったけど、女の人が俺のおでこをジッと見ている。

「あの......」
俺はそう言って、顔を上げると、女の人は、何か思いつめたような表情で、俺を見ている。

「どうしたの?」
女の人が、心配そうに言う。

「あの......助けて下さい......」
俺は、女の人に言う。

「えっ?助け?えっ?えっ?えっ?」
女の人は、何を言っているのかわからないような顔をした。俺も、何だかよくわからない。

「助けって......何よ?」
女の人が俺にそう聞く。俺は、あたふたして、何も言うことができずにいた。

「えっと......あの......えっと......」
俺は、女の人に何か言うために口を開いた。

「助けて......下さい......」
その言葉を最後まで言うことはできなかった。それは、女の人の目から、ポロポロと涙がこぼれていたから......

「えっ?えっ?えっ?えっ?」
女の人は、ゆっくりと顔をあげると、

「助けて欲しいのなら......私を信用しなさい......」
女の人は、そう言って、立ち去ろうとする。

「えっと......待って下さい......」
女の人は、振り返る。俺も、それを追って、女の人に近づく。

「あの......あの、俺......」
女の人は、何か呟くように、言い始めた。

「あのね......」
俺は、女の人が何を言っているのか、その意味を聞き取ることができなかった。

「助けて欲しいなら......私を信用しなさい......」
女の人は振り返り、俺と女の人の距離を縮める。

「あのね!」
女の人は俺の手を引っ張り、俺と女の人の距離を詰める。

「あのね!」
女の人は、俺の手を強く握り、俺は、女の人の目をまともに見ることができない。

「おわっ!」
女の人が突然、手を放すと、女の人が俺の方に向き直る。

「あのね!この石、私を助けてくれて!」
女の人は、そう言って、手のひらを俺に見せる。

「うわっ!うわわっ!うわわわっ!」
俺は、女の人の手から、突然、飛び出した石に驚く。

「ちょ、ちょっと!それ、どういうこと?」
俺は、女の人の手を見つめながら問いかける。

「私ね、この石を、この目で見て、この石から伝わってきた力を信じようと決めたの!」
女の人は、俺の手を少し強く握りなおしながら、答える。

「その、あの!」
俺が口を開くと、女の人がゆっくりと話す。

「私が、この石から伝わってきた力を信じて!」
女の人が、俺の目を見つめながら話す。

「私は、この石に宿る精霊が見える!この石が、この精霊の力を信じている!」
俺は、女の人の目を見つめながら答える。

「精霊が見える?」
女の人が、俺の目を見つめながら答える。

「この、精霊は『精霊の巫女』よ!あなたの精霊が見えない、私の精霊!」
女の人が、俺の目を見つめながら話す。

「精霊が見える...?」
俺は、女の人の目を見つめながら言う。

「精霊の巫女...?」
俺が、女の人の言葉をオウム返しに呟く。

「...『精霊の巫女』よ...!」
俺は、女の人の目を見つめる。女の人の目に涙が浮かんでいた。

「え?何?」
俺は、女の人の顔を見て、困惑をする。

「精霊の巫女は、この石から生まれた...!」
女の人の言葉に、俺は、頷く。

「石から生まれた...?」
俺が、女の人の目を見つめながら言う。

「精霊を、この石に宿す...?」
女の人の表情が、真剣なものに変わる。

「...この石が宿す精霊は...『巫女』よ...!」
女の人の声が、震える。

「巫女...」
俺が、言葉を失う。

「この石は、私の命(いのち)...!」
女の人が、俺を見て言う。

「私の命(いのち)が、この石に宿る...!」
女性の体から、青白い光(エネルギー)が迸(ほとばし)る。光(エネルギー)が俺に集まっていく。
俺は、目を見張って、女の人を見つめる。

「精霊の絹糸は、この石から生まれている...!」
女の人の体から青白い絹糸が伸びていく。

「光の糸は『巫女』の力で、私の命(いのち)を守ってくれ...!」
女の人の体から、光の糸が大量に噴き出してくる。

「精霊の巫女の力(いのち)を、この石に宿し...!」
女の人が、糸の放出をやめない。

「精霊の巫女の絹糸は、この石に宿り...」
女の人の全身が光の糸に包まれて、光(エネルギー)のヴェールに包まれる。

「光に包まれた、絹糸は...」
女の人が、糸の放出をやめない。

「...絹糸の鎧を纏(まと)うように...」
女の人の全身が、光のヴェールに包まれて、白く光った。白く輝く絹糸の塊が、俺の身体のあちこちに張り巡らされていく。

それは絹糸で出来た羽衣のように体にフワリと纏わり付き、俺の全身を包み込んでいく。
精霊の絹糸で出来た生命(いのち)の羽衣...俺の体が、フワリと浮き上がる。

「...これって...」
生命(いのち)の羽衣が俺の身体を包み込む。『...精霊が、私を守ってくれる...!!』生命(いのち)の羽衣が、俺の全身を包み込む。
『...私の力(いのち)は、あなたの力(いのち)なの...』絹糸の海に漂う、生命(いのち)の羽衣が俺の全身を包み込む。

「...やっと、私の力(いのち)が...」
絹糸の糸の海から、俺の身体の内側から力が湧き出してくるのを感じていた。

「...これで...あなたが、私の...」
自分の内から湧き上がる力に、俺の身体が震えていた。
『...私は...私の力(いのち)であなたを守りたかった...』
『...これで...あなたは、私の...』
『...これで、私は...』
『...私の力(いのち)は、あなたの力(いのち)なのよ...』絹糸の海から浮き上がる、生命の羽衣が俺の全身を覆う。

「...!!」
『...私の力が...あなたに、あなたの力(いのち)が...あなたの中から溢れ出すの...』
絹糸の海から浮き上がる俺の身体を包んでいた生命の羽衣が弾けて、俺の全身を包み込む。

「...!!」
生命の羽衣から、絹糸の海に光が舞う。
『...私の力(いのち)...私の力(いのち)を...』

「...!!」
生命の羽衣から、絹糸の海が弾けて、俺の身体を包み込んだ絹糸の海に光が集まる。
俺は、輝く絹糸の海を見つめていた。
絹糸の海を漂っていた光は、絹糸の海が弾けた後に、俺を包み込んでいた金色の光の粒子となって、虹色に輝きながら、少しずつ消えていく。光は、やがて俺の心の中に溶けて、絹糸の海の中にゆっくりと溶ける。
絹糸の海は消え、俺は一人、取り残されていた。

「...っ...!」
『...大丈夫。大丈夫。私は、あなたの味方。味方よ。


「っ...!?」
俺の目から、温かい涙が溢れる。俺の前に、優しい笑みが浮かぶ。『だから、安心して。
何があっても、何があっても、私は味方。』

「...!?」
俺は、自分の瞳を両手で覆い隠すと、顔を上げた。目の前に居るのは、一人の少女だった。白い髪、赤い瞳の美女。
俺より年下に見えるが大人の女性だ。

「っ...!」
『...大丈夫。大丈夫。あなたはまだ、生きているわ。』赤い瞳の美女が、優しく笑う。
『貴方は、私を守る存在。私は、貴方を守る。
』そう言うと、俺の前に黒い小さな箱が現れる。


「.........ん?」
『...何をしているの?早く、箱を開けて。』

「あっ...う...ん...」
『...もう大丈夫。この箱は、貴方を守る。』

「っ...!」
俺は頷くと、箱を開ける。すると、箱の中には金色の大きな鳥の形をした石が、俺の身体の中に沈んでいた。

『...これが、私の石。』

「......えっ?」
『...この石が、貴方を助ける。』

「......っ!?」
『...これは、私の特別な石。』

「.........!」
『...その石を持っている限り、私は貴方を守る。』

「っ...!...!」
俺の胸に、金色の鳥の形をした石が大きく感じる。『...大丈夫。私の力が、貴方を助けるわ。


「えっ...?」
『...私の力は、貴方の生命(いのち)の守り。』

「...!」

『...だから、大丈夫。』

「...!!」
『...ねぇ』白いの髪をした少女は、俺に向かってそっと語りかける。『...どうして、この星に、あの森があると思う?』

「......」
何だろう。何か、とても大事な事を、忘れてしまったような気がした。『...あの子達(・・・)がいるからね。』ああ。
そう、そうだな。『...あの子達は、この星を守護する。この星の生命(いのち)を護る為に、貴方が求める力を与える。
あの子達は、この星の理(ことわり)を司(つかさど)る。
』...ああ。そういえば、そういえば。
『...生命(いのち)の守護...。』そうだ。
俺は、生命の守護を願っている。『...生命の守護...。』この森に住む者の為の守護。生命(いのち)の力を奪う者への守護。
...あの森(あそこ)には、精霊達がいる。俺は、精霊達に、この森へ住まわせてもらっているんだ。
『...あの森に住んでいる者達を守って欲しい。それは、とてもとても、大事な事...。
』そう、そうなんだ。...何だろ。この不思議な感覚(・・・・)は。
...いや、違う。この感覚(・・・・)は、俺が勝手に感じているものじゃない。『...大事な事。』...そうだ。
大事な事だ。『...大事な事。』俺は、少女の言葉に耳を傾けた。『...あの森に住む者達を、守って欲しい。
それは、とてもとても、大切な事...。』ああ。そうだ。そうだ。『...あの森に住む者達を護る為に、貴方が求める力を与える。
あの子達は、この星を守護する。この星の生命(いのち)を護る為に、貴方が求める力を与える。
あの子達は、貴方が力を与える者と同じ命を持っています。
』そうだ。『...あの子達は、貴方の求めに答えてくれる。そして、この星の生命(いのち)を守る力をくれる。
』そうだ。そうだ。...あの森に住む者の生命(いのち)を守る。この星の生命(いのち)を護る。
...これが、彼女の、俺の望み。『...あの子達は、私に力を与えてくれる。そして、私と同じ命を持っています。
この森に住む者たちを護る為の力。あの子達は、貴方の求めに答えてくれる。』ああ、そうだ。
『...あの子達は、貴方の求めに答えてくれる。私達の生命(いのち)を護る為に、貴方が求める力を与えてくれる。
この森に住む者達を護る事を、貴方が望むなら貴方の意思で貴方の生命(いのち)が護られます。
』...ありがとう、少女。『...ありがとうございます。』俺の、大切な生命(いのち)を、守ってくれる。
だから、この森に住む者達を護る。あの子達を護る為に、この森に住む者達を護らないと。俺は、力に、ならねば。


「おい」