『私を捨てた夫が、私の会社に面接に来た』第3話「浮気相手が、元妻に頭を下げた』
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翌日のお昼、美咲の会社のロビー。家賃が払えない梨花が、3年前に夫を奪った相手の美咲に頭を下げて助けを求める。梨花は、健太が失業を半年も隠していたことを美咲に打ち明け、お腹の赤ちゃんをどう育てればいいか分からないと話す。美咲は梨花を許していないとはっきり伝える。梨花が健太から聞いた話を伝えると、美咲は一度も浮気していないと否定し、梨花は「美咲も浮気した」は健太の嘘だと理解する。美咲は赤ちゃんのために、美咲の名刺の裏へ区役所の妊婦さんの相談窓口を書き、梨花へ渡す。梨花は3年前のことを本気で謝り、美咲は謝罪を受け止める。静かな余韻の後、梨花の後をつけてきた健太が現れ、「梨花、俺のところへ戻ってこい」と命じる。梨花は名刺を両手に持ち続け、美咲とともに健太へ顔を向けたまま何も答えない。最後は二人の動かない背中を同時に見せ、誰も移動しないまま終わる。
佐藤 梨花「家賃が払えない。助けて。」
高橋 美咲「私から夫を奪ったのに?」
佐藤 梨花「昨夜知ったの。半年も失業を隠してた。」
佐藤 梨花「妊娠してるのに、お金がなくて。この子、どう育てればいいの。」
二人を斜め後ろから捉える。梨花は左、美咲は右。美咲の後頭部のシニヨンを見せ、二人の顔と額は隠す。梨花の小さなうなずきと、二人の距離で対立を表す。
高橋 美咲「夫を奪ったあなたを、許していない。」
佐藤 梨花「分かってる。でも、健太はお互い様だって……。」
美咲は初めから梨花へ体を向けており、振り向く動作は置かない。怒りは抑えた断言で伝える。否定を聞いた梨花の肩が止まり、沈黙する。
佐藤 梨花「健太は『美咲も浮気した』って。」
高橋 美咲「健太の嘘よ。私は浮気してない。」
涙が流れる瞬間や虚空を見つめる演技は要求しない。
佐藤 梨花「私、健太の嘘を信じて、美咲さんを傷つけたんだ。」
美咲は一枚の名刺を左手で支え、右手のペンで裏面に短く書く。紙面は斜めで判読できない。
高橋 美咲「区役所の妊婦さんの相談窓口よ。赤ちゃんもお金も相談できるわ。」
右から差し出される一枚の白い名刺を、左の梨花が両手で受け取る。驚きは梨花の台詞の間と声で表す。
高橋 美咲「赤ちゃんのためよ。そこで相談できる。」
佐藤 梨花「どうして……私なんかに。」
梨花は左、美咲は右。名刺を持つ手は体の前に隠れる。
佐藤 梨花「3年前、あなたを傷つけてごめんなさい。」
高橋 美咲「謝罪は受け止めるわ。」
背面の二人に戻す。美咲は距離を保って待つ。
佐藤 梨花「……ありがとう。」
左に梨花の後頭部と肩、右に美咲の後頭部と肩。二人の手元は下端の外で、梨花は名刺を両手に保持している。
高橋 健太「梨花、後をつけてきた。元妻に何の用だ?」
左に梨花、右に美咲。斜め後方から二人の後頭部、肩、背中を収める固定。背中を主に見せながら、健太へ向いた二人の横顔の輪郭と閉じた口元が確認できる。二人の視線の先に健太がいるが、画面には入れない。二人の間隔と左右を維持し、無人の受付カウンターと鉢植えを背景にする。
高橋 健太の声が響いた。「梨花、俺のところへ戻ってこい。」
高橋 健太の声が響いた。「……なんで二人とも、何も答えないんだ。」