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『地球最後のコンビニ 第1話「最後のお客様」』 ・ AI BunCho 公式

第1話第1話「最後のお客様」(小説版)

2026/10/20 公開・4,372字・👁️ 9 閲覧

『地球最後のコンビニ 第1話「最後のお客様」 第1話』

——世界が沈むまで7分。男は妻の誕生日ケーキを買いに、最後のコンビニへ来た

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人が消えた東京で、一軒だけ開いているコンビニ。412夜目、沈む街から来た男は、屋根で待つ妻の誕生日ケーキを買いに来た。残り7分。夜勤のハルは、自分の世界を賭けて彼の最後の一分に灯りをともす。

汐見 ハル(主人公・夜勤の店員)——412日前の夜、初めてのシフト中に東京から人が消えた。以来ひとりで店を開け続け、来る客全員の写真を撮って壁に貼っている。「家に帰る日」のために最後のケーキを一つとってある。

イラン・モロー(第1話の客(準主役)・沈む街の夫)——海に沈んでいく街の船大工。街の灯りが全部消えた夜、屋根の上で妻マーラに「光のほうへ行って」と言われ、唯一の光だったこの店のドアへ泳いできた。妻の34歳の誕生日のケーキとろうそくを買うために。

マーラ・モロー(イランの妻(屋根の上))——暗闇が怖い。街の灯りが消えた屋根の上で、ろうそくの燃えさし一本で夫を待つ。今日が34歳の誕生日。

大庭 清(前の店長(第1話は防犯映像の中だけ))——長年この店を守ってきた店長。マニュアルを残して姿を消した。第1話では412日前の防犯映像に映るだけで、行方はシリーズの縦軸になる。

明日の店員(明日の防犯映像でレジに立つ人物(第1話は肩から下と声だけ))——明日の映像で、客として入ってくるハルに「いらっしゃいませ」と言う。顔は映さない。正体は第8話で明かす(ハルの弟カイ、28歳)。第1話では誰なのか分からないことが開いた問い。

無人の東京の交差点。人も車もない。信号だけが変わり続け、角に一軒だけ灯りのついた店がある。

店内。ハルがひとり、おにぎりの列を揃えている。入店チャイム。彼女は顔を上げる。

自動ドアが開く。その向こうは通りではない。屋根だけが突き出た夜の海。海水が床のタイルに流れ込む。

ずぶ濡れの男が灯籠を下げて駆け込んでくる。イラン。

イラン・モロー「やってますか」

ハルは驚かない。小さく頭を下げる。

汐見 ハル「いらっしゃいませ。ともしびマートへ」

     *

タイトル。人のいない街に一軒だけの店。

[地球最後のコンビニ 第1話「最後のお客様」]

VO:haru「四百十二夜。東京の人は、誰も来ない」

イランが通路を走り、棚を探す。

イラン・モロー「ろうそく。それとケーキ。何でもいい」

汐見 ハル「どなたの誕生日ですか」

イラン・モロー「妻の。屋根の上で待ってる」

ドアの向こう、屋根の上に女のシルエット。ろうそくの燃えさしが一本だけ。

VO:ilan「マーラ。今日で三十四」

[07:08]

VO:haru「値段じゃない。残り時間」

イラン・モロー「十分だ。十分だよ」

イラン・モロー「間に合わなきゃ、彼女は一人で終わる」

カウンターの奥の壁。天井まで、見知らぬ人々のインスタント写真で埋まっている。

VO:haru「四百十二人のお客様。四百十二の世界」

写真の一枚一枚。霜まみれの女、眼鏡に灰の女、光る蛾の瓶を持つ老人。

汐見 ハル「皆さんの分、一枚ずつ撮ってるんです」

前の店長・大庭のマニュアル。鉛筆の手書き。

[一、灯りを消すな。二、来た客は必ず迎えよ。三、客は零の前に帰せ。]

VO:haru「店長がルールを残していった」

ハルが天井の蛍光灯を見上げる。

VO:haru「灯りが消えたら、店はこの世界を忘れる」

ハルの手が、テープで封じた照明スイッチを押さえる。

VO:haru「中にいる者も」

奥の事務所の防犯モニター。日付の表示が一日ずれている。

[413夜目]

VO:haru「防犯カメラの時計は、最初の夜から一日進んでいる」

     *

イラン・モロー「ここに一人で?」

汐見 ハル「東京が静かになった夜から」

(412夜のひとつ)イートインで、ひとり期限切れのおにぎりを食べる。

VO:haru「期限が切れたのは、わたしが食べる。誰かが」

モニターの中、412日前の店。客がいる。レジに店長の大庭。新人のハルは私服。

VO:haru「わたしの最初のシフト。二十九歳だった」

VO:haru「大庭さんは三十年、この店をやってた」

窓の外、交差点を渡る人々が歩きながら光の粒になって消える。傘だけが落ちる。

店内の客も消える。かごが落ちる。

VO:haru「わたしは倉庫にいた」

店は空っぽ。レジにも誰もいない。

VO:haru「エプロンとルールだけ残して」

汐見 ハル「開けておけば、いつか扉が家に開く」

イラン・モロー「じゃあ二人とも、運が要るな」

[05:44]

     *

ハルがイランをデザートの冷蔵棚へ連れていく。

棚は空っぽ。

イラン・モロー「甘いものなら何でも。頼む」

事務所の小さな冷蔵庫。

ケーキがひとつ。ドームに付箋。

[家に帰る日に]

VO:haru「扉が家に開く夜のために、取っておいた」

VO:haru「弟とわたしは、いつもケーキを半分こした」

VO:haru「カイ。どこかにいる」

ハルがケーキをカウンターに置き、イランの前へ滑らせる。

イラン・モロー「これ、あなたのだろ」

汐見 ハル「今は、あなたのです」

イラン・モロー「ありがとう」

イラン・モロー「名札が空だ。名前は?」

汐見 ハル「ハルです」

イラン・モロー「ハル。借りができた」

[04:46]

イラン・モロー「払えるものがない」

汐見 ハル「あなたの世界のものを」

汐見 ハル「それはだめ」

イラン・モロー「じゃあこれ。俺たちの最後の灯りだ」

汐見 ハル「向こうで要るでしょう」

イラン・モロー「ルールはルールだろ」

ハルは迷いながら、イランから灯籠を受け取る。

ハルが受け取った灯籠を、カウンターに置く。

     *

床の水が広がり、菓子が浮く。

イラン・モロー「床、ごめん」

汐見 ハル「去年の春は砂の世界でした」

イラン・モロー「俺が船を作って、彼女が塗った」

VO:ilan「あの港の船は全部、彼女の色だ」

イラン・モロー「あと四十回、祝うつもりだった」

二人とも黙る。ハルがケーキを袋に入れる。

イラン・モロー「彼女、暗いのが怖いんだ。昔から」

VO:ilan「街の灯りが消えたとき、彼女が言った。光のほうへ行けって」

イラン・モロー「残ってた光は、この店のドアだけだった」

イラン・モロー「この店の灯りに向かって、一時間泳いだ」

イラン・モロー「これ全部、お客さん?」

汐見 ハル「来た人、全員です」

イラン・モロー「あなたのは?」

イラン・モロー「動かないで」

写真はまだ灰色のまま。

イラン・モロー「待ってれば出てくる」

イラン・モロー「あなたは、俺みたいな世界の人じゃないよな」

汐見 ハル「わたしの世界は終わりました。四百十二夜前に」

イラン・モロー「終わってたら、あなたはこっち側にいる」

汐見 ハル「じゃあ、なんで帰れないの」

イラン・モロー「たぶん、まだ誰かが待ってるんだ」

[02:39]

     *

店は足首まで浸水。灯籠が通路を流れていく。灯りが瞬く。

[02:32]

汐見 ハル「ここにいて。ルールなんて、ただのノート」

イラン・モロー「最後の一分なら、彼女といたい」

汐見 ハル「なら、わたしも一緒に運ぶ」

ハルが後を追う。敷居で水の幕が光に変わり、彼女を押し戻す。

イラン・モロー「まだ、あなたの世界の番じゃない」

マーラ・モロー「イラン!」

イラン・モロー「今行く!ケーキあるぞ!」

イランはケーキを頭上に掲げ、海へ戻っていく。

屋根のろうそくが消える。真っ暗。

イラン・モロー「マーラ!見えない!」

マーラが暗闇の中で震える。

[01:25]

     *

ハルが水をかき分けて、スイッチのパネルへ。

店じゅうの灯りが一斉にともる。光がドアから海へあふれ出す。

沈む街から見ると、海の上に浮かぶ光の戸口から、一本の光が屋根まで伸びる。

マーラ・モロー「見える」

マーラ・モロー「本当に戻ってきた」

イラン・モロー「最後のひとつだった」

イラン・モロー「誕生日おめでとう、マーラ」

イラン・モロー「願いごとを」

マーラ・モロー「誰が灯りを?」

イラン・モロー「友だちだ」

イラン・モロー「ハルっていうんだ」

店の灯りが激しく瞬く。ハルはドア枠を両手で掴んで離さない。

汐見 ハル「まだ」

[00:10]

光の筋の中、ろうそくの横で抱き合う二人。水が屋根の端に届く。

マーラ・モロー「怖くない」

ドアが閉まる。店じゅうの灯りが消える。

真っ暗な店に、イランが払った灯籠だけが燃えている。

蛍光灯が一本ずつ戻る。

VO:haru「灯りひとつで、足りた」

ハルは床の海水を拭く。いつもの夜のように。

ハルは灯籠をそっと持ち上げる。

汐見 ハル「払いすぎです」

灯籠はレジの横のフックに吊るされる。

     *

灰色だった写真に、ハル自身の顔が浮かび上がる。

VO:haru「四百夜で、初めてのわたしの写真」

ハルは自分の写真を、客たちの写真の中に貼る。

VO:haru「家って、誰かがろうそくをともす場所なのかも」

冒頭と同じ交差点。夜が明けかけている。

     *

[413夜目]

モニターの中、コートを着たハルが、外の通りから客として入ってくる。手に灯籠。

OS:clerk「いらっしゃいませ。ともしびマートへ」

[12:00]

汐見 ハル「……誰が、わたしのレジに?」

     *

自動ドアの向こうは別の世界。店員は驚かない=毎晩のこと。

レジは値段ではなく、客の世界の残り時間を出す。

イランの代償(間に合わなければ妻は一人で終わる)、ハルの代償(灯りが消えれば店と中の者が消える)。

ハルの目的(いつか扉が家に開く)。

ハルは「家に帰る日」のために最後のケーキをとっておいた。

マーラは暗闇が怖い。イランが目指した光はこの店のドアだった。払った灯籠が最後の灯りだった。

ハルの世界はまだ終わっていない。終わるとき店員は「客の側」に立つ(イランの仮説)。

店員は自分の世界の番まで扉を越えられない。

灯りがひとつでも残れば、店はこの世界を忘れない(灯籠が店を救う)。

防犯カメラは明日を映す。明日の客はハル自身=地球の番は明日。

大庭はどこへ行ったか/静寂の夜に東京の人はどこへ行ったか。

明日の防犯映像でレジの向こうに立つ店員は、ハルの弟カイ。

【次章への問い】明日、客としてやって来るハルを、レジの向こうで迎えるのは誰か。

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