【公式映像脚本】『地球最後のコンビニ 第1話「最後のお客様」 第1話』
キャッチコピー:世界が沈むまで7分。男は妻の誕生日ケーキを買いに、最後のコンビニへ来た
■ あらすじ
人が消えた東京で、一軒だけ開いているコンビニ。412夜目、沈む街から来た男は、屋根で待つ妻の誕生日ケーキを買いに来た。残り7分。夜勤のハルは、自分の世界を賭けて彼の最後の一分に灯りをともす。
■ 登場人物
・汐見 ハル(主人公・夜勤の店員):412日前の夜、初めてのシフト中に東京から人が消えた。以来ひとりで店を開け続け、来る客全員の写真を撮って壁に貼っている。「家に帰る日」のために最後のケーキを一つとってある。
・イラン・モロー(第1話の客(準主役)・沈む街の夫):海に沈んでいく街の船大工。街の灯りが全部消えた夜、屋根の上で妻マーラに「光のほうへ行って」と言われ、唯一の光だったこの店のドアへ泳いできた。妻の34歳の誕生日のケーキとろうそくを買うために。
・マーラ・モロー(イランの妻(屋根の上)):暗闇が怖い。街の灯りが消えた屋根の上で、ろうそくの燃えさし一本で夫を待つ。今日が34歳の誕生日。
・大庭 清(前の店長(第1話は防犯映像の中だけ)):長年この店を守ってきた店長。マニュアルを残して姿を消した。第1話では412日前の防犯映像に映るだけで、行方はシリーズの縦軸になる。
・明日の店員(明日の防犯映像でレジに立つ人物(第1話は肩から下と声だけ)):明日の映像で、客として入ってくるハルに「いらっしゃいませ」と言う。顔は映さない。正体は第8話で明かす(ハルの弟カイ、28歳)。第1話では誰なのか分からないことが開いた問い。
■ 本編カット割り台本
【シーン S1:海に開く自動ドア】
◆ 001(3秒)
ト書き:無人の東京の交差点。人も車もない。信号だけが変わり続け、角に一軒だけ灯りのついた店がある。
◆ 002(3秒)
ト書き:店内。ハルがひとり、おにぎりの列を揃えている。入店チャイム。彼女は顔を上げる。
◆ 003(3.5秒)
ト書き:自動ドアが開く。その向こうは通りではない。屋根だけが突き出た夜の海。海水が床のタイルに流れ込む。
◆ 004(3秒)
ト書き:ずぶ濡れの男が灯籠を下げて駆け込んでくる。イラン。
イラン・モロー「やってますか」
◆ 005(2.5秒)
ト書き:ハルは驚かない。小さく頭を下げる。
汐見 ハル「いらっしゃいませ。ともしびマートへ」
【シーン S2:残り時間を出すレジ】
◆ 006(4秒)
ト書き:タイトル。人のいない街に一軒だけの店。
画面文字:[地球最後のコンビニ 第1話「最後のお客様」]
VO:haru「四百十二夜。東京の人は、誰も来ない」
◆ 007(3.5秒)
ト書き:イランが通路を走り、棚を探す。
イラン・モロー「ろうそく。それとケーキ。何でもいい」
◆ 008(2.5秒)
汐見 ハル「どなたの誕生日ですか」
◆ 009(3.5秒)
イラン・モロー「妻の。屋根の上で待ってる」
◆ 010(4.5秒)
ト書き:ドアの向こう、屋根の上に女のシルエット。ろうそくの燃えさしが一本だけ。
VO:ilan「マーラ。今日で三十四」
◆ 011(3秒)
◆ 012(3秒)
画面文字:[07:08]
VO:haru「値段じゃない。残り時間」
◆ 013(3.5秒)
イラン・モロー「十分だ。十分だよ」
◆ 014(4秒)
イラン・モロー「間に合わなきゃ、彼女は一人で終わる」
◆ 015(3秒)
◆ 016(4.5秒)
ト書き:カウンターの奥の壁。天井まで、見知らぬ人々のインスタント写真で埋まっている。
VO:haru「四百十二人のお客様。四百十二の世界」
◆ 017(3.5秒)
ト書き:写真の一枚一枚。霜まみれの女、眼鏡に灰の女、光る蛾の瓶を持つ老人。
◆ 018(3秒)
汐見 ハル「皆さんの分、一枚ずつ撮ってるんです」
◆ 019(3秒)
ト書き:前の店長・大庭のマニュアル。鉛筆の手書き。
画面文字:[一、灯りを消すな。二、来た客は必ず迎えよ。三、客は零の前に帰せ。]
VO:haru「店長がルールを残していった」
◆ 020(4秒)
ト書き:ハルが天井の蛍光灯を見上げる。
VO:haru「灯りが消えたら、店はこの世界を忘れる」
◆ 021(3秒)
ト書き:ハルの手が、テープで封じた照明スイッチを押さえる。
VO:haru「中にいる者も」
◆ 022(4.5秒)
ト書き:奥の事務所の防犯モニター。日付の表示が一日ずれている。
画面文字:[413夜目]
VO:haru「防犯カメラの時計は、最初の夜から一日進んでいる」
【シーン S3:東京が静かになった夜】
◆ 023(3.5秒)
イラン・モロー「ここに一人で?」
◆ 024(3.5秒)
汐見 ハル「東京が静かになった夜から」
◆ 024a(4秒)
ト書き:(412夜のひとつ)イートインで、ひとり期限切れのおにぎりを食べる。
VO:haru「期限が切れたのは、わたしが食べる。誰かが」
◆ 025(4.5秒)
ト書き:モニターの中、412日前の店。客がいる。レジに店長の大庭。新人のハルは私服。
VO:haru「わたしの最初のシフト。二十九歳だった」
◆ 025a(3.5秒)
VO:haru「大庭さんは三十年、この店をやってた」
◆ 026(4秒)
ト書き:窓の外、交差点を渡る人々が歩きながら光の粒になって消える。傘だけが落ちる。
◆ 027(3.5秒)
ト書き:店内の客も消える。かごが落ちる。
◆ 028(3秒)
VO:haru「わたしは倉庫にいた」
◆ 029(4秒)
ト書き:店は空っぽ。レジにも誰もいない。
◆ 029a(3.5秒)
VO:haru「エプロンとルールだけ残して」
◆ 030(4.5秒)
汐見 ハル「開けておけば、いつか扉が家に開く」
◆ 031(3秒)
イラン・モロー「じゃあ二人とも、運が要るな」
◆ 032(2.5秒)
画面文字:[05:44]
【シーン S4:最後のケーキ】
◆ 033(4秒)
ト書き:ハルがイランをデザートの冷蔵棚へ連れていく。
◆ 034(3秒)
ト書き:棚は空っぽ。
◆ 035(3秒)
◆ 036(3.5秒)
イラン・モロー「甘いものなら何でも。頼む」
◆ 037(3秒)
◆ 038(3.5秒)
ト書き:事務所の小さな冷蔵庫。
◆ 039(4秒)
ト書き:ケーキがひとつ。ドームに付箋。
画面文字:[家に帰る日に]
VO:haru「扉が家に開く夜のために、取っておいた」
◆ 040(3秒)
◆ 040a(3.5秒)
VO:haru「弟とわたしは、いつもケーキを半分こした」
◆ 040b(3秒)
VO:haru「カイ。どこかにいる」
◆ 041(3.5秒)
ト書き:ハルがケーキをカウンターに置き、イランの前へ滑らせる。
◆ 042(3秒)
イラン・モロー「これ、あなたのだろ」
◆ 043(3秒)
汐見 ハル「今は、あなたのです」
◆ 044(3.5秒)
イラン・モロー「ありがとう」
◆ 044a(3秒)
イラン・モロー「名札が空だ。名前は?」
◆ 044b(2.5秒)
汐見 ハル「ハルです」
◆ 044c(3秒)
イラン・モロー「ハル。借りができた」
◆ 045(2.5秒)
画面文字:[04:46]
◆ 046(3.5秒)
イラン・モロー「払えるものがない」
◆ 047(3秒)
汐見 ハル「あなたの世界のものを」
◆ 048(3秒)
◆ 049(2.5秒)
汐見 ハル「それはだめ」
◆ 050(3.5秒)
イラン・モロー「じゃあこれ。俺たちの最後の灯りだ」
◆ 050a(3秒)
汐見 ハル「向こうで要るでしょう」
◆ 050b(3秒)
イラン・モロー「ルールはルールだろ」
◆ 051(3秒)
ト書き:ハルは迷いながら、イランから灯籠を受け取る。
◆ 052(3秒)
ト書き:ハルが受け取った灯籠を、カウンターに置く。
【シーン S5:屋根の上の暗闇】
◆ 053(4秒)
ト書き:床の水が広がり、菓子が浮く。
◆ 054(3秒)
イラン・モロー「床、ごめん」
◆ 055(3.5秒)
汐見 ハル「去年の春は砂の世界でした」
◆ 055a(3.5秒)
イラン・モロー「俺が船を作って、彼女が塗った」
◆ 055b(4秒)
VO:ilan「あの港の船は全部、彼女の色だ」
◆ 055c(3.5秒)
イラン・モロー「あと四十回、祝うつもりだった」
◆ 055d(3秒)
◆ 056(4秒)
ト書き:二人とも黙る。ハルがケーキを袋に入れる。
◆ 057(4秒)
イラン・モロー「彼女、暗いのが怖いんだ。昔から」
◆ 058(4.5秒)
VO:ilan「街の灯りが消えたとき、彼女が言った。光のほうへ行けって」
◆ 059(3.5秒)
イラン・モロー「残ってた光は、この店のドアだけだった」
◆ 059a(4秒)
イラン・モロー「この店の灯りに向かって、一時間泳いだ」
◆ 060(3秒)
◆ 061(4秒)
イラン・モロー「これ全部、お客さん?」
◆ 062(3秒)
汐見 ハル「来た人、全員です」
◆ 063(3秒)
イラン・モロー「あなたのは?」
◆ 064(3秒)
◆ 065(3.5秒)
イラン・モロー「動かないで」
◆ 066(2秒)
◆ 067(3秒)
ト書き:写真はまだ灰色のまま。
◆ 067a(3秒)
イラン・モロー「待ってれば出てくる」
◆ 068(4秒)
イラン・モロー「あなたは、俺みたいな世界の人じゃないよな」
◆ 069(4秒)
汐見 ハル「わたしの世界は終わりました。四百十二夜前に」
◆ 070(3秒)
◆ 071(4.5秒)
イラン・モロー「終わってたら、あなたはこっち側にいる」
◆ 072(3秒)
◆ 072a(3.5秒)
汐見 ハル「じゃあ、なんで帰れないの」
◆ 072b(3.5秒)
イラン・モロー「たぶん、まだ誰かが待ってるんだ」
◆ 073(2.5秒)
画面文字:[02:39]
【シーン S6:最後の一分は彼女と】
◆ 074(4秒)
ト書き:店は足首まで浸水。灯籠が通路を流れていく。灯りが瞬く。
◆ 074a(2.5秒)
画面文字:[02:32]
◆ 075(4秒)
◆ 076(3.5秒)
◆ 077(3.5秒)
汐見 ハル「ここにいて。ルールなんて、ただのノート」
◆ 077a(3秒)
◆ 078(4秒)
イラン・モロー「最後の一分なら、彼女といたい」
◆ 079(3秒)
汐見 ハル「なら、わたしも一緒に運ぶ」
◆ 080(4秒)
ト書き:ハルが後を追う。敷居で水の幕が光に変わり、彼女を押し戻す。
◆ 080a(3秒)
◆ 081(3秒)
イラン・モロー「まだ、あなたの世界の番じゃない」
◆ 082(3秒)
◆ 082a(3秒)
マーラ・モロー「イラン!」
◆ 082b(3秒)
イラン・モロー「今行く!ケーキあるぞ!」
◆ 083(4.5秒)
ト書き:イランはケーキを頭上に掲げ、海へ戻っていく。
◆ 083a(3秒)
◆ 084(4.5秒)
ト書き:屋根のろうそくが消える。真っ暗。
◆ 084a(3.5秒)
イラン・モロー「マーラ!見えない!」
◆ 085(3.5秒)
ト書き:マーラが暗闇の中で震える。
◆ 086(3秒)
◆ 086a(3秒)
◆ 087(2.5秒)
画面文字:[01:25]
【シーン S7:すべての灯り】
◆ 088(3.5秒)
ト書き:ハルが水をかき分けて、スイッチのパネルへ。
◆ 089(3秒)
◆ 090(2.5秒)
◆ 091(4秒)
ト書き:店じゅうの灯りが一斉にともる。光がドアから海へあふれ出す。
◆ 092(4秒)
ト書き:沈む街から見ると、海の上に浮かぶ光の戸口から、一本の光が屋根まで伸びる。
◆ 092a(3.5秒)
◆ 093(3.5秒)
マーラ・モロー「見える」
◆ 094(4秒)
◆ 094a(3秒)
マーラ・モロー「本当に戻ってきた」
◆ 094b(3秒)
イラン・モロー「最後のひとつだった」
◆ 095(3秒)
◆ 096(4秒)
イラン・モロー「誕生日おめでとう、マーラ」
◆ 096a(3秒)
イラン・モロー「願いごとを」
◆ 096b(3秒)
◆ 097(3秒)
マーラ・モロー「誰が灯りを?」
◆ 098(3秒)
イラン・モロー「友だちだ」
◆ 098a(3秒)
イラン・モロー「ハルっていうんだ」
◆ 098b(3秒)
◆ 099(4秒)
ト書き:店の灯りが激しく瞬く。ハルはドア枠を両手で掴んで離さない。
◆ 099a(3秒)
◆ 099b(3秒)
◆ 100(3秒)
汐見 ハル「まだ」
◆ 101(2.5秒)
画面文字:[00:10]
◆ 102(5秒)
ト書き:光の筋の中、ろうそくの横で抱き合う二人。水が屋根の端に届く。
◆ 102a(3秒)
マーラ・モロー「怖くない」
◆ 103(3.5秒)
ト書き:ドアが閉まる。店じゅうの灯りが消える。
◆ 103a(2.5秒)
◆ 104(3.5秒)
ト書き:真っ暗な店に、イランが払った灯籠だけが燃えている。
◆ 105(3.5秒)
ト書き:蛍光灯が一本ずつ戻る。
◆ 105a(3秒)
VO:haru「灯りひとつで、足りた」
◆ 106(3秒)
◆ 107(3.5秒)
◆ 107d(3.5秒)
ト書き:ハルは床の海水を拭く。いつもの夜のように。
◆ 107a(3.5秒)
ト書き:ハルは灯籠をそっと持ち上げる。
◆ 107b(3秒)
汐見 ハル「払いすぎです」
◆ 107c(3.5秒)
ト書き:灯籠はレジの横のフックに吊るされる。
【シーン S8:わたしの写真】
◆ 108(3秒)
ト書き:灰色だった写真に、ハル自身の顔が浮かび上がる。
◆ 109(3.5秒)
◆ 109a(3.5秒)
VO:haru「四百夜で、初めてのわたしの写真」
◆ 110(3.5秒)
ト書き:ハルは自分の写真を、客たちの写真の中に貼る。
◆ 110a(3.5秒)
◆ 111(4秒)
VO:haru「家って、誰かがろうそくをともす場所なのかも」
◆ 112(4.5秒)
ト書き:冒頭と同じ交差点。夜が明けかけている。
【シーン S9:明日の防犯カメラ】
◆ 113(2.5秒)
◆ 114(3秒)
画面文字:[413夜目]
◆ 115(4秒)
ト書き:モニターの中、コートを着たハルが、外の通りから客として入ってくる。手に灯籠。
◆ 116(3秒)
OS:clerk「いらっしゃいませ。ともしびマートへ」
◆ 117(2秒)
画面文字:[12:00]
◆ 118(2.5秒)
汐見 ハル「……誰が、わたしのレジに?」