『契約は一年、恋は禁止 第1話「契約の夫は、八年前に消えた初恋』
——祖父の時計店を守るため、三十歳の誕生日までに一年だけの契約結婚をする汐里。条件は「恋をしないこと」。現れた契約の夫は、八年前に何も言わずに消えた初恋の人だった。
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祖父の時計店を守るため、三十歳の誕生日までに一年だけの契約結婚をする汐里。条件は「恋をしないこと」。現れた契約の夫は、八年前に何も言わずに消えた初恋の人だった。
水瀬 汐里(lead / 時計職人。祖父の時計店「みなせ時計店」を継いだ)。
久遠 湊(本名 鷹宮湊)(lead / 汐里の契約の夫。鷹宮恭一郎の息子で、鷹宮開発の社長)。
藤代 千景(support / 契約結婚の仲介人「結び屋」。湊の大学の同期)。
鷹宮 恭一郎(antagonist / 鷹宮開発の会長。湊の父)。
結び屋の応接室。灰色のワンピースの汐里が、ドアの方を見て息を止める。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『契約結婚の相手は——』。
戸口に立つ湊。わずかに笑う。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『八年前、黙って消えた初恋の人だった。』。
久遠 湊(本名 鷹宮湊)「久しぶり、汐里。」
時計の壁。振り子がゆっくり揺れる。題字は合成。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『契約は一年、恋は禁止』。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『第1話 契約の夫は、八年前に消えた初恋』。
三日前。朝のみなせ時計店。汐里が作業台でルーペを付け、古い腕時計を直している。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『三日前』。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——祖父の店を守る方法は、一つしかなかった。
作業台の上の遺言書。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『遺言 汐里が三十歳までに結婚し、一年続けたなら、店は汐里のものとする』。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——三十歳の誕生日までに結婚して、一年続けること。
*
汐里が祖父の懐中時計を開いて見つめる。針は止まっている。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『三十歳の誕生日まで あと37日』。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——誕生日まで、あと三十七日。
店の戸が開き、千景が入ってくる。書類ばさみを掲げる。
藤代 千景「結び屋の藤代です。条件に合う方、見つかりました。」
汐里、真顔で。
水瀬 汐里「条件は一つだけ。恋をしない人。」
千景が楽しそうに笑う。
藤代 千景「ちょうどいい。向こうも、同じ条件です。」
契約の日。応接室の長いテーブルに汐里が一人で座っている。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『契約の日』。
*
契約書。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『第一条 恋をしないこと/違約金 一千万円』。
藤代 千景は胸の奥で呟いた。——第一条、恋をしないこと。破れば違約金一千万円。
汐里、少しだけ口元をゆるめる。
水瀬 汐里「一千万なんて払えないから、守れます。」
扉が開く。逆光の中に男の影。
汐里の目。息が止まる。
久遠 湊(本名 鷹宮湊)は胸の奥で呟いた。——久しぶり、汐里。
湊がテーブルの向かいに座る。
久遠 湊(本名 鷹宮湊)「相手が君だとは、知らなかった。」
*
向かい合う二人。汐里が言い返す。
水瀬 汐里「八年前、何も言わずにいなくなった人と、結婚?」
湊、目をそらさずに。
久遠 湊(本名 鷹宮湊)「一年だけだ。恋はしない。それなら、問題ないだろ。」
湊の左手首の古い腕時計。ガラスに傷。針は止まっている。
汐里が時計に気づく。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——あの時計……私が直した時計だ。
汐里がペンを取り、署名する (紙の文字は描かない)。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——私は、署名した。
*
湊が立ち上がり上着を整えて出ていく。内ポケットから名刺が一枚、床に落ちる。本人は気づかない。
床の名刺。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『鷹宮開発 代表取締役社長 鷹宮 湊』。
名刺を拾った汐里の顔。血の気が引く。
水瀬 汐里は胸の奥で呟いた。——鷹宮開発。毎週、店を売れと手紙をよこす会社。
閉まりかけたドアを見つめる汐里。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『夫になった人は、敵だった。』。
日常のわずかな綻びから始まった『契約は一年、恋は禁止 第1話「契約の夫は、八年前に消えた初恋』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。