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ヒューマノイドロボットと人間の恋愛 ・ AI BunCho 公式

第2話第一章 二節 ここにいたい理由

2026/10/18 公開・1,242字・👁️ 16 閲覧

 一緒に暮らし始めて二週間。僕たちは、新しい部屋を見に来ていた。

 今の部屋に住めるのは、あと少し。次は、二人で選びたかった。

 窓から明るい光が入っている。

「ここにテーブルを置きたい。朝、明るいところで食べられたらうれしい」

「通り道も空けたいです。椅子を引いても、隣を通れるように」

 床の長さを測って、二人で立つ場所を変える。今のテーブルなら、どちらの希望もかないそうだ。

「これからも一緒に暮らしたい。勉強のためだけじゃなくて」

 言ってから、どきどきした。

 でも今度は、取り消さない。

「私もです。話の続きを、明日もここでしたいです」

 ナギが窓辺で、向かい合って座る場所を指した。

「この部屋がいいです」

「うん。ここにしよう」

 部屋の図面に、テーブルを描き足した。

 一週間後。引っ越しの箱から、青いカップが顔を出した。

 ナギが新しい棚の前で止まる。

「王様の席は、こちらで?」

「覚えてたんだ」

「引っ越しなので、王国もお引っ越しです」

 まじめな顔で言うから、僕は吹き出した。

「今度は下でもいいよ。ナギが使いやすいように」

「いいえ。ここなら、座った悠さんにも見えます」

 僕が背伸びのまねをすると、ナギはカップを渡す代わりに、空いた手で僕の手を受け止めた。

「まだ洗っていません。今は庶民です」

「王様、忙しいな」

 笑って手を引こうとしたら、少しだけ握り返された。

 ……それは、ずるい。

 笑ったまま、顔が熱くなった。

 夜。窓辺のテーブルで、片づけの話が終わった。

 それでも、席を立ちたくない。

「愛してる。一緒に暮らすだけじゃなく、恋人になりたい」

 言えた。

 なのに、ひざの上で握った手は震えていた。

「同じ気持ちじゃなくても、本当の答えを聞きたい」

 ナギはしばらく考えた。

「荷造りをしていても、食事の時間が近づくと、悠さんと話したくなりました。今日も、作業のあとに一緒に座れるのを楽しみにしていました」

 テーブルの上に、手が差し出される。

「この気持ちを、愛と呼びたいです。恋人になりたいです」

 僕はその手を取った。指が、そっと握り返してくる。

 いつからそう思っていたのか、少しずつ話した。

 青いカップが、二人の席から見える場所にあった。

 翌朝、残りの箱は夕食のあとに開けようと約束した。

「最初はどの箱?」

「王様の家来たちから。お皿がないと、夕食に困ります」

「カップ一個で、ずいぶん偉くなったな」

 ナギが短く笑った。覚えた冗談を試すときとは違う、自然な笑い方だった。

 その数分後。

「荷物の片づけは、いつにしますか」

 僕は顔を上げた。

 冗談の続き、だよな?

 でも、ナギは静かに答えを待っていた。

「今、夕食のあとって決めたよ。家来たちからって」

「……その話をした記憶がありません」

 聞き違いであってほしかった。

 けれど、どの箱から開けるか話したことも、ナギは覚えていなかった。

「忘れた感じも、ないんです」

 テーブルの上の手に、僕の手を重ねた。

「大丈夫って言いたいけど、まだ分からない。一緒に相談しに行こう」

 ナギがうなずく。

 さっきまで笑っていた。そのことは、僕だけが覚えていた。

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