『狐の花嫁(実写版) 第1話「三百年目の天気雨』
——三百年探した男をついに見つけた狐の花嫁。だが彼のコートの裏には、彼女の似顔絵つきの討伐命令が縫い込まれていた。
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三百年探した男をついに見つけた狐の花嫁。だが彼のコートの裏には、彼女の似顔絵つきの討伐命令が縫い込まれていた。
千歳(lead / the fox bride)。
篝 朔(lead / onmyoji assassin, reincarnation of Tōji)。
藤次(past life of Saku (300 years ago); lantern maker and secret archer of the Bureau)。
雨宮 律(antagonist / director of the Bureau (陰ノ司))。
尾白(Chitose's guardian, a small old white fox)。
花婿の背中越し。背に回した手の中で、折り紙が細い鋼の刃に変わる。奥で白無垢の花嫁が朱塗りの盃に口をつけている。
朱塗りの盃がちょうど三つ。奥の二つは空で乾いており、手前の一つだけが満ちている。晴れた空から落ちる雨粒が、満ちた盃に輪を作る。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『人間と結婚すれば、狐の花嫁は死ぬ。』。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『狐の花嫁』。
十日前。夕暮れの古い町並みに天気雨。陽光の中で雨粒が光る。石段と朱色の門が遠くに見える。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『十日前』。
裸足の花嫁が濡れた石段を登っていく。白無垢の裾は泥で灰色に汚れている。
(三百年の回想)江戸の町の土の道を、同じ花嫁が歩く。周囲の人影はぼやけて流れる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『三百年』。
*
(回想)ガス灯の橋の上、夜。同じ花嫁が欄干にもたれ、行き交う男たちの顔を見ている。
現在。白い綿帽子の下の顔。琥珀色の狐の瞳が、何かを探している。
千歳「あの人の歌を、もう一度。」
黒い狐の尾の根元、赤い紐の真鍮の鈴。表面に細いひび。
花嫁が石段の途中で立ち止まり、振り向く。どこからか鼻歌が聞こえる。
石段の上、朱色の門柱にもたれた男。長いチャコールのコート、目を閉じて鼻歌を歌っている。
*
男の左手首の内側。丸い提灯の形をした火傷の痕。
花嫁の目が大きく見開かれる。雨と涙が混じる。
千歳「……見つけた。」
男が目を開ける。灰色の目。天気雨の中に白無垢の花嫁がいることに気づく。
篝 朔「……何だ、お前。」
花嫁が一段上がり、深く、完璧に美しいお辞儀をする。
千歳「あなたの妻です。」
男の無表情。一拍の間。
篝 朔「人違いだ。」
*
花嫁が顔を上げ、穏やかに微笑む。
千歳「三百年探しました。間違えません。」
花嫁の袖から小さな白い狐が顔を出す。緑の羽織、瓢箪の酒を飲んでいる。
尾白「姫、押しが強すぎじゃ。」
男はため息をつき、花嫁の横をすり抜けて石段を下り始める。
篝 朔「帰れ。雨が止む前に。」
花嫁は二段後ろをついていく。裸足で濡れた石を踏む。
千歳「では、あなたの家に帰ります。」
肩の上の白狐が花嫁の耳元でささやく。表情は真剣。
尾白「三つ目の盃を人と交わせば、夜明けにお前は燃える。」
*
花嫁は前を見たまま、静かに微笑む。
千歳「知っています。だから最後に取っておくの。」
俯瞰。彼女が通り過ぎるたび、消えていた提灯が一つずつ灯っていく。
前を歩く男の横顔。彼女に見えない側で、表情が冷たく固まる。
男がコートの前を少し開く。朱色の裏地に、白い折り札がびっしり縫い込まれている。
指が一枚の紙を引き出す。墨で描かれた花嫁の似顔絵と、朱の印。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『討伐命令 対象:狐の花嫁』。
*
紙を戻す指が、折り紙の小刀に触れる。紙がわずかに鋼に変わりかける。
男が肩越しに振り返る。二段後ろの花嫁が、無邪気に微笑み返す。
男の灰色の目のアップ。口元にかすかな笑み。
篝 朔「見つけたのは、俺のほうだ。」
黒地に真鍮の鈴。ひびがわずかに広がる。
視線の先に、文字が浮かび上がる——『つづく』。
日常のわずかな綻びから始まった『狐の花嫁(実写版) 第1話「三百年目の天気雨』の真実は、静かな余韻を残して幕を閉じる。だが、彼らが選んだその先の未来はまだ誰も知らない。