小川哲と宮島未奈が対談、成瀬シリーズから考える続編の人物配置と書き方
この記事の重要ポイント
- 本屋大賞の話から、シリーズ制作の話へ
- 主人公を生かすために、周囲の人物を考える
- 一冊の完結と、その先を書く難しさ
- 続編の新鮮さを、人物の役割から点検する
同じ主人公で物語を書き続けるとき、新鮮さはどこから生まれるのでしょうか。Book Bangに掲載された小川哲さんと宮島未奈さんの対談では、成瀬シリーズをめぐり、新しい人物を生み出す難しさや、一冊で完結させる想定と続編制作の違いが語られました。連作やWeb小説の人物配置を見直す手がかりを探ります。
事実確認できたこと
本屋大賞の話から、シリーズ制作の話へ
Book Bang掲載の対談で、小川哲さんと宮島未奈さんは、それぞれの作品の本屋大賞での順位を話題にしました。小川さんの『君が手にするはずだった黄金について』は2024年に10位、宮島さんの『成瀬は信じた道をいく』は2025年に10位となっています。宮島さんには『成瀬は天下を取りにいく』で同賞の1位を得た実績もあり、二人はその違いにも触れています。
対談では、受賞順位だけでなく、作品を続けて書く際の難しさにも話が及びました。小川さんは『成瀬は信じた道をいく』を読み、宮島さんの書き手としての成長を感じたと述べています。そのうえで、シリーズを重ねるほど、すでに使った短編の形式や作風が気になり、次に選べるものが少なくなっていくという問題を挙げました。
主人公を生かすために、周囲の人物を考える
宮島さんが語ったのは、主人公の成瀬をより生き生きと描ける相手を考えながら執筆する方法です。一方で、その役割を担う新しい登場人物を考える作業は、書き進めるにつれて難しくなったといいます。主人公そのものだけでなく、誰と組み合わせて描くかが、制作上の課題として語られています。
小川さんは、各短編で異なる人物の視点を用い、成瀬を描く宮島さんの取り組みに注目しました。また、過去に書いた話との類似を作者は気にしがちでも、読者は必ずしもそこまで細かく覚えていないという自身の考えも示しています。同種の話を書くことを許容する小川さんの考えと、視点を変えて描く宮島さんの方法が、対談の中で並んでいます。
一冊の完結と、その先を書く難しさ
宮島さんによると、『成瀬は天下を取りにいく』は、当初はその一冊で物語を閉じるつもりで書いた作品でした。しかし、続編を書く段階では、最初の作品で選んだ人物配置が、その後の制作にとって難しさにもなったと振り返っています。一作を締めくくるための判断と、同じ主人公で次の物語を展開するための条件が、必ずしも一致しなかったという経験が語られました。
対談では、シリーズをどこで終えるかも話題になっています。小川さんは、物語の展開を使い切るような終わり方にも言及しつつ、『成瀬は都を駆け抜ける』までの三部作のまとまりを評価しました。宮島さんは、執筆で力を使い切ったという感覚を述べ、シリーズ全体が整った形に見えるならうれしいと応じています。
分析編集部の見方
ここからは、上の事実をもとにした編集部の考察と創作への応用ポイントです。
続編の新鮮さを、人物の役割から点検する
ここから創作に持ち帰れるのは、続編の変化を大きな事件だけに求めず、主人公を見る人物の立場から設計する方法です。まず既存の各話について、視点人物が主人公の何を知り、何を誤解し、どの行動に驚くのかを書き出してみます。次の話では、その反応が重ならない相手を考えると、主人公の性格を急に変えずに別の側面を見せる案を検討できます。人物の名前や職業を変えるだけでなく、主人公との距離や利害を変えるのがポイントです。
一方で、毎回すべてを新しくすることを目標にすると、連作の持ち味まで失うおそれがあります。各話のあらすじを並べ、繰り返したい魅力と、変化させたい要素を分けてみましょう。また、一巻や一章を締めくくる前には、その決着で誰との関係が変わるのか、次の話でも使える人物の役割は何かを確認できます。続編のためだけに決着を避けるのではなく、今回の読み応えと次回の選択肢を別々に点検する方法です。
BunCho で試すなら
AI BunChoのAIあらすじ生成(/synopsis)で、自作の主人公の性格と各話に残したい魅力を条件に入れ、主人公を見る相手の立場だけを変えた続編案を複数試してみましょう。出てきた案を、相手が主人公に求めるもの、衝突する理由、見えてくる一面の三点で比較し、既存の話と役割が重なる部分を確認します。採用したい案はスタジオ(/ai-studio)で場面として書き、説明を足すだけでなく会話や行動の違いとして描けるかを確かめてください。
よくある疑問
宮島未奈さんは、最初からシリーズ化を想定していたのですか?
対談では、『成瀬は天下を取りにいく』一冊で完結させるつもりだったと話しています。続編を書く際には、最初の作品での人物配置が難しさにもなったと振り返りました。
小川哲さんは、似た話を繰り返すことをどう考えていますか?
作者が気にするほど読者は細部を覚えていないという自身の考えから、似た話を書くことも許容しています。同時に、短編ごとに違う人物を通して成瀬を描く宮島さんの方法にも注目しています。
出典・一次情報・参考資料
- 小川哲×宮島未奈・対談「小説に〈正解〉はあるのか」 bookbang.jp · 2026-10-26
記事のデータおよび検証情報は2026年10月26日時点のものです。