文芸 公開

鈴木結生が「不運な奴ら」「ロマンス」を書評、記憶を物語に変える構成を考える

  • 不運な奴ら
  • ロマンス
  • メタフィクション
  • 小説構成
  • 書評

Book Bangに掲載された作家・鈴木結生の書評が、B・S・ジョンソンの「不運な奴ら」と蓮見翔の「ロマンス」を取り上げています。焦点は、作品が自らの成り立ちを扱うことと、作者の経験を参照することです。書き手にとっては、記憶の内容だけでなく、それをどのような順序や人物関係で読者に届けるかを考える材料になります。

事実確認できたこと

書評の軸は、作品と作者への二つの参照

Book Bangの書評で鈴木結生は、ジェイムズ・ジョイスの『若き芸術家の肖像』を入口に、自己言及を二つに分けて論じています。一つは、物語が自分自身の成立を扱うこと。もう一つは、作者の人生を手がかりに物語が書かれていることです。鈴木は前者をメタフィクション、後者を自伝や私小説に関わる視点として整理し、二つの関係に目を向けています。

その議論を踏まえて取り上げるのが、B・S・ジョンソンの『不運な奴ら』と蓮見翔の『ロマンス』です。鈴木は前者では作者の記憶と本の形式の関係を読み、後者では演劇という表現の領域が抱える危機への応答を見ています。二作品を、若い表現者の姿と自己言及という視点から論じる書評です。

出典:若き芸術家たちの肖像――作家・鈴木結生が書棚に加えた2冊

「不運な奴ら」は27の冊子に分かれた小説

若島正が訳した『不運な奴ら』は、箱の中に27の冊子を収めた形の小説です。語り手はサッカーの取材で訪れた町をきっかけに、そこで暮らしていた友人トニーを回想します。鈴木の説明では、語られる出来事の多くがジョンソン自身の記憶に由来しています。冊子に分かれた造りと、個人的な記憶を扱う内容が併存している作品です。

鈴木は当初、冊子を並べ替える仕掛けに関心を持って読み始めましたが、次第に作者の経験がどう書き込まれているかへ注意を移したと述べています。また、訳者あとがきの紹介を通じ、刊行時には変わった形式と誠実な内容の取り合わせが不釣り合いと受け止められたことにも触れています。書評は仕掛けの珍しさだけでなく、その形式の内側にある記憶へ視線を向けています。

出典:若き芸術家たちの肖像――作家・鈴木結生が書棚に加えた2冊

「ロマンス」では二人が同じ時期の経験を作品にする

『ロマンス』に登場するのは、脚本家の坂谷と漫画家の大八木です。二人は、二年前に体験した数日間をそれぞれの作品にしようとします。その過程で認識のずれや衝突が起こるという筋立てが紹介されています。ここでは、経験した出来事だけでなく、それを表現へ移す行為そのものが人物同士の関係に関わっています。

鈴木は『ロマンス』について、作品の成立を扱う側面と、作者自身を参照する側面の両方を持つと論じています。また、演劇の危機に向き合う作品として位置づけています。書評では、『不運な奴ら』の形式と記憶をめぐる議論から、別の時代の表現者たちが経験を作品にする物語へと話を進めています。

出典:若き芸術家たちの肖像――作家・鈴木結生が書棚に加えた2冊

分析編集部の見方

ここからは、上の事実をもとにした編集部の考察です。

仕掛けの目的と、記憶を語る人物の差を設計する

創作に持ち帰るなら、まず構成の仕掛けが何を伝えるためにあるのかを一文で書いてみるとよいでしょう。たとえば回想を順不同に置くなら、読者を驚かせるためなのか、語り手が記憶を整理できない状態を表すためなのかを分けて考えます。そのうえで時系列順のあらすじも作り、並べ替えによって人物の見え方がどう変わるかを比較します。違いが乏しければ、順序ではなく視点や場面の選び方を見直す余地があります。

同じ経験を複数の人物が作品にする設定では、人物ごとに残したい場面と省きたい場面を決めると、対立の具体化に役立ちます。一方には大切な会話が、もう一方には書きたくない記憶かもしれません。共有した出来事の一覧と、それぞれの作品に採用する出来事の一覧を別々に作れば、単なる意見の違いではなく、選択が相手に及ぼす影響を場面にできます。Web連載なら、その差が読者に分かる回をどこに置くかも検討できます。

BunCho で試すなら

AI BunCho のAIあらすじ生成で、同じ数日間を経験した二人の表現者について、職業、残したい記憶、伏せたい記憶を設定し、それぞれを主人公にしたあらすじを作ってみます。二つの案を見比べ、出来事の採否が変わる箇所を一つ選び、そこから生じる衝突と、その直前に必要な場面を整理します。最後に、その場面を先に見せる案と後で明かす案を作り、読者が各人物を理解する順序を比べてみてください。

よくある疑問

「不運な奴ら」はどのような形の本ですか?

B・S・ジョンソンによる小説で、若島正が翻訳しています。箱に27の冊子を収めた造りで、書評では鈴木結生が冊子を無作為に読み進めたと述べています。

「ロマンス」で作品を作ろうとするのは誰ですか?

脚本家の坂谷と漫画家の大八木です。二人が二年前に経験した数日間をそれぞれ作品にしようとする中で、すれ違いや衝突が起こると紹介されています。

確認に使った資料

  1. 若き芸術家たちの肖像――作家・鈴木結生が書棚に加えた2冊 bookbang.jp・2026-10-13

発表・報道で確認できた事実と、編集部の分析を分けて書いています。情報は2026年10月13日時点のものです。

← メディアのトップへ